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第5話:白金獣魔師は聖女を助ける

 ◇


「ん、あれは……?」


 村を目指して坂を下っていたところ、地面に横たわってる何かが目に入った。

 はっきり言うと薄々正体には気付いていたが、そう思いたくなかったと言うのが正直なところだ。

 近くに駆け寄り、確認する。


「行き倒れか……」


 倒れていたのは、長い金髪が特徴的な少女。

 まだ発見が早かったのか、魔物に荒らされたり泥まみれになっているという事はなかった。

 非常に綺麗な状態だ。


 少しばかりの期待を込めて、脈を確認する。


 ……!?


「まだ生きてる! おい、起きろ!」


 頬をペチペチと叩いたり、肩を揺らしたり、あらゆることを試してみる。

 すると——


「ふぁああ……って、ふぁあ!?」


 目を覚ますと見知らぬ男が目の前にいたからだろう、めちゃくちゃ驚いていた。


「良かった、生きてたみたいだな」


 ジッと少女の姿を見る。

 透き通るような蒼い瞳に、しなやかで華奢な肢体。栄養を全部吸ってしまったのかと思うほど立派な双丘。

 ……と、見るところはそこではない。


 まだ顔色は良くないが、命に別状はなさそうだ。


「私、寝てたんですか……?」


「気を失ってたというのが正確なところじゃないか?」


「あっ、そういえば私、お腹が減って力が出なくて……それで、いつの間にか……」


「何日食べてないんだ?」


「二日くらい……です。途中で食べ物がなくなっちゃって……」


「なるほどな。見たところ、空腹だけじゃなくて多分脱水症状気味だぞ。まずは水を飲んだ方がいい」


 俺はアイテムスロットからさっき収納しておいた水筒を取り出して、少女に飲ませた。


「ぷはっ……生き返りました!」


「それは良かった。じゃあ、これを食べてみな」


 そう言って、またまたアイテムスロットから取り出した木の実を少女に手渡す。

 身体が衰弱している時は果物みたいに吸収が良い食べ物があると良い。そういう意味で都合が良かった。


「あ、ありがとうございます……」


 受け取った少女は、無言でむしゃむしゃと食べ続け、あっという間に大きな木の実を一つ食してしまった。

 こんなに小さい身体によく入るものだなと感心する。


 食べ終わった後の少女は、みるみるうちに顔色が良くなり元気になった。


「本当に助かりました! 私、レーナって言います。危うく死ぬところでした。ありがとうございました……」


「助けられて良かったよ。まあ、ほとんどレッドのおかげだけどな」


 ふわふわと宙を浮いている小さな竜をチラッと見る。

 レッドとしてはあまり人助けをしたという実感はないみたいだが……。


「俺は今井悠人。怪しい者じゃないから安心してくれ」


「イマイ……ユウト?」


「あー……発音しにくいならユートでいいよ」


「わかりました、ではユート。助けてくれたお礼に私があなたを癒してあげますね!」


「え?」


「私、こう見えてただの聖女じゃないんです。玻璃聖女(クリスタルセイント)——特別な聖女なんです」


 そう言って、レーナは俺の頭にポンと右手を触れた。

 柔らかい手だなぁなどと思っていると、適度に暖かく、強い光が発生した。


「……っ!?」


 声にならない声が出てしまう。

 いったい俺は何をされてるんだろう?

 疲れを癒す? どうやって? っていうか俺あんまり疲れなんて溜まってないんだが……。


 そんなことを思いながら静止していると、レーナの右手から光が止んだ。


「——な、なんでですか!? なんでこの険しい道を通ってきて疲労が全然溜まってないんですか!?」


「えーと……?」


「おかしいです……そんなはずがありません!」


「うーん、と言われてもな」


 確かにそんなに長距離移動していなかったし、ピクニック感覚で楽しんでいたし、ちゃんと休憩も取っていた。

 しかしこれを一から説明するとなると面倒だな。

 それに、異世界から転移してきたということを話すのも憚られる。


 正直に言ってしまってもいいのかもしれないが、この世界の常識的がわからない中で安易な判断を下すのは時期尚早だと思う。

 いずれ話すとしても、タイミングは今じゃなくてもいい。


「ま、まあこういうこともあるということで勉強になりました……。でも、これじゃお礼ができません!」

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