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第4話:白金獣魔師は木の実を集める

「ユートー、これ食べるー?」


「うん?」


 レッドが道伝いに歩いていけと指示するのでその通りに進んでいると、少しの間姿を消していた。

 しばらくすると何事もなく戻ってきたのだが、何やら食べ物をたくさん抱えて戻ってきたようだ。


「食べられておいしい木の実! もぐもぐ……おいしい」


 説明しながら口いっぱいに頬張るレッド。

 確かにちょっと歩いたのでちょうどお腹が減っていたところだ。

 調理なしでそのまま食べられるのは助かる。


「ありがとう。これ、もらうよ」


 レッドから黄色の木の実を一つ受け取って、一口——美味い!


「なんだこれ! めちゃくちゃ美味しいぞ。マンゴーヨーグルトみたいな味だな。いくらでも食べられそうだ。これ、なんていう木の実なんだ?」


「うーん、わかんない!」


 ええー、わかんないのかよ!?

 まあ、少なくとも毒はないし美味しく食べられるならなんでもいいか。


「でもいっぱい取ってきちゃったなぁ……これどうしようか」


「貯めておくのおすすめー」


「と言ってもバックパックとか手頃な袋があるわけじゃないし……うーん、どうしようか」


「こうやればいいよー?」


 と言うと、レッドは大きく息と共に木の実を吸い込んだ。

 しゅおんという音ともに、全てが口の中へ。


「貯めるってそういうことかよ!」


「でもいつでも出せるよー」


 しゅおんという音ともに、口から木の実がそのままの形で出てきた。


「お、おう……なるほど……でもこれは……」


 レッドが言わんとしていることは分かった。多分これは『異空間収納魔法』的なものなんだろう。

 目の前で見ていたから使い方も用途も分かるし、便利だということは伝わってくる。


 しかし——見た目はリバースそのものだぞ……。


「いいんだけど……ちょっとどうにかならないかな」


 俺はさっき魔法を改良したのと同じ要領で、リバース魔法をどうにかできないか考えた。

 レッドは口を経由して異空間に物を転送している。

 戻すときは逆の手順で口を経由して異空間から転送しているというわけだ。


 俺がやりたいのは、つまり口を経由せずに物を転送するということ。


 これさえできれば見た目もスマートになるというものだ。


「意外と簡単だったな。これで良いのか——?」


 思わず呟き、レッドが持つ木の実に魔法をかける。

 俺の想定通り、木の実が姿を消した。その代わりに異空間に収納されたことが感覚的にわかる。


 この異空間収納魔法……アイテムスロットでも呼ぼうか。

 無限に収納できるわけではなく、最大魔力量に依存するらしい。質量分の魔力量が制限されるようなイメージで、最大魔力が少し減ってしまう。

 しかしレッドの魔力は強大なので、言うほどのデメリットにはならなさそうだ。


 俺みたいにテイマーじゃなければかなり大変だろうなぁ。


「ユートの魔法すごーい! どうやったの——!?」


「いやーまぁ、これもちょっとだけ改良しただけだよ。転送時の一部プロセスを簡略化するイメージかな?」


「ふーん、すごーい!」


 ああ、多分分かっていないな……はは。

 俺は苦笑いしつつ、また歩みを進めるのだった。


 途中に綺麗な水が流れる川を見つけたので、食べ終わった木の実の皮を水筒代わりにしてアイテムスロットに突っ込んでおいたり、その後もレッドが大量に木の実を持ってくるので逐一収納したり。


 冒険というよりもピクニック気分で心が癒された。


 この森には幸い強い魔物がいないみたいなので、そんな意味でも気軽にどこでも歩いていける安心感がある。

 もっとも、最初にレッドをテイムできていなければ今頃ビビりながら慎重に彷徨うハメになっていただろうけどな……。


 水も食料もなく。

 そう考えるとゾッとしてしまうところもある。


「あっ、村だ!」


 新緑の森林が下りに差し掛かったタイミングで、少し遠くに人工の建築物が並んでいる場所が見えた。

 これがレッドの案内してくれていた場所か。

 あと1キロくらい。そういえば既に結構歩いていた気がするんだが……。


「レッド、そういや村は近いって言ってなかったか?」


「うーん? 近かったでしょ?」


「え、そうだっけ……?」


「遠かった……?」


「えーいや……うーん? まあ」


 微妙に噛み合っていない気がするが、ドラゴン故の距離感覚が原因なのだと思っておくとしよう。

 確かに空を飛んでひとっ飛びすれば数キロの差など誤差に等しいのかもしれない。


 森を歩くのは大変だったが、充実した時間でもあった。

 これはこれで良かったと思う。

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