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第20話:白金獣魔師はダンジョンへ

 ◇


 小屋を出て、裏庭へ。

 地中にぽっかり穴が空いているかのように黒いモヤがかかっている。


 梯子(はしご)がかかっているようなので、俺が下、レーナが後に続く形でダンジョンに降りていく。


 中の様子はいかにもダンジョンという感じだった。

 堅そうな石の壁に囲まれ、中は薄暗いが至る所に設置されたタイマツに照らされ視界は十分。


 俺たちが降りてきた場所は広間のようになっており、窮屈な感じはなさそうだった。


 背後には大量の文字が書かれた石板。

 奥には合計10個の扉が横並びになっている。


 一通り目の前の情報を整理したところで、レーナが降り切った。


「意外と小規模なダンジョンですね……」


「そうなのか? 十分大きい気がするんだが」


「瘴気の大きさから考えて五層くらいあるかと思っていましたが、このダンジョンはこの層で完結しています。ユートにはまずダンジョン攻略のセオリーを教えなければいけませんね。……と、その前に歓迎があるようです」


「歓迎?」


 と聞き返したと同時。

 今までいなかったはずの魔物の気配が一斉に溢れてきた。


 石畳からにゅっと魔物が召喚され、俺たちを囲んでくる。

 数にして100は超えてそうだ。


 魔物の見た目はまるでねん土のような奇妙な見た目をしている。

 ゴーレム? ……というより、スライムみたいな感じである。


 ダンジョンってのはなんでもありかよ……。


「ユート、ボクが蹴散らすー?」


 レッドが魅力的な提案をしてくるが——


「いや、まずは俺がやってみるよ。この剣も試してみたいところだしな。危なそうだったら助けてくれ」


「分かったー」


 俺は剣を一閃、素振りしてみる。

 よし、これならいけそうだな。


「レーナ、ちょっと巻き込まれないように注意してくれ」


 そう言って、俺は魔剣を握り締めた。

 剣なんて初めて使うが、使いこなせそうな気がした。


 もちろん剣の技術なんてのはさっぱりだから、俺にはただ単に振るだけしかできないが——

 魔剣に魔力を流し込むと、赤、青、黄、緑、黒、白……なんとも言えない全てが調和したように煌めいた。


 目の前の魔物に向けて、力の限り横なぎに振るった。


 ザン!


 斬撃が発生し、広範囲に煌く光が魔物に向けて飛んでいく。

 その斬撃が魔物に衝突し——


 キイィィィィ!!!!


 情けない声をあげて、魔物は一斉に倒れた。

 この一撃で倒した数は20〜30体。


 剣は複数体を相手にするのは苦手そうなイメージがあったが、意外と範囲攻撃も使える。

 これならいけそうだ。


 感触的にはさっきの大熊の魔物よりも強い感じだったので、爺さんの言葉を信じるなら雑魚というわけではない。それだけこの魔剣が強力だということだろう。


 レーナとレッドに誤射しないように注意しながら、残った魔物に次々と斬撃を投げていく。


「ふう」


 五発ほどの攻撃を済ませたところで、全ての魔物を倒した。

 ——と思っていた。


 キィィィィ!


「まだ生き残っていたのか!?」


 しかも、残った一匹はレーナに襲いかかっていた。

 急いで剣を振ろうとして、思いとどまる。


 このまま斬撃を投げると、レーナを巻き込んでしまう。

 なら、範囲の狭いファイヤーボールで掠めるように……いや、それも少しでもズレたら爆発してレーナを巻き込んでしまうし、あまり逸れるとそもそも魔物に当たらない。


 ……どうすればいい?


 一瞬の迷いが頭を駆け巡る間にも、状況は悪くなる。

 直接の物理攻撃——つまり剣で斬ってしまえばいいということに気がついたのは、0.1秒ほどが経過した頃だった。


「ユート、私なら大丈夫ですよ」


 レーナは涼しい顔でそういうと、襲いくる魔物に手を伸ばした。

 手のひらから白い光が魔物を刺したかと思えば、魔物の身体が内部から白く輝き、爆散した——


「……え?」


 レーナがただの弱い女の子だと思っていたわけではない。

 たった一人で魔物が潜む異世界を冒険していたのだから、


 しかしいくらなんでもこの状況は想像していなかった。


「レーナって強いんだな……?」


「これくらい普通ですよ?」


 きょとんとするレーナだった。

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