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第16話:元クラスメイトは敗北する

 その翌日、ビストリア村近くの山中。風神聖斗と乙峯湯乃佳が率いる七人組のパーティがギルドから依頼を受け、冒険に出ていた。


「チーム『カザカミ』出陣すっぞー!」


「「「「「「うおーーー!」」」」」」


 悠人よりも早く異世界に転移していた彼らだったが、実は今日が初めての冒険である。


「三日も時間潰しちまったが、こうして初心者装備も手に入れたことだし気合いが入るってもんだな」


「ええ、この衣装とっても好き♡ ファンタジー世界のお姫様みたい!」


 セットで金貨1枚の激安装備に彼らは満足していた。

 村の中でできる簡単なFランク依頼で日銭を稼ぎ、やっとの思いでここまで漕ぎ着けた。


 悠人に比べればかなり遠回りだったが、新人冒険者としては順調なスタートではある。


「綺麗だぜ、湯乃佳……」


「ああん、聖斗もかっこいいわ……」


 こうして人目を憚らずイチャつくのは今に始まったことではないので、他のパーティメンバーは全く気にしていない。


「にしても悠人のやつ今頃何してっかな?」


 パーティメンバーの一人が呟いた。

 もちろん字面通り心配しているのではなく、順風満帆な自分たちと比較して優劣をつけたいだけなのだが。


「あんな根暗陰キャの心配してやるとは大したもんだな。俺は優しいパーティメンバーに囲まれて幸せだぞ!」


「ああん! 私も悠人が心配! 今頃どうしてるかしらぁ? どこかでのたれ死んでなければいいけどぉ?」


 キャッキャと嗤う湯乃佳——


 そうこうしている間に、目的地が目前に迫ってきた。

 『カザカミ』の七人が受けた依頼は、ポーションの原料となる薬草——七色草(しちしきそう)の採集である。


「この辺だな……おっ、あれじゃね?」


「聖斗すごいー! もう見つけるなんて素敵!」


「いやぁ、それほどでも……あるかもなぁ?」


「「「「「さすが聖斗!!」」」」」


 パーティメンバーからの露骨な持ち上げに満面の笑みを浮かべる聖斗。

 七色草が群を成している場所に嬉々と足を伸ばす。


「まるで掴み取り大会だな! 受付嬢のクソ女は時間がかかるとか嘘ついてやがったが楽勝じゃねえか!」


 その瞬間だった——


 キラーン。


 木々に隠れていた熊のような大型の魔物が赤眼を光らせた。


「ん?」


 聖斗が気づいた瞬間には——


「ぬおっ!?」


 小石で足を滑らせたおかげで、鋭い大爪を間一髪でかわす聖斗。

 しかし獰猛(どうもう)な魔物の攻撃は止まらない。


 巨体に似合わぬ俊敏な動きで攻めてくる魔物。


「こいつはえーな……!」


「聖斗、何してんだよ! あんなのぶちのめしちまえよ!」


「そ、そうだな! やってやらあああ!!」


 聖斗は思い出したように右手に持つ剣に力を入れる。

 賢者は、剣と魔法をどちらも高水準で扱える特殊ジョブ。しかし聖斗は魔法の使い方がよく分からず、剣しか使えなかった。


「オラオラオラオラ!」


 叫びながら、慣れない手つきでぶんぶんと剣を振り回す聖斗。

 しかし、図体が大きくも素早い動きの魔物には、一撃たりとも当たることはなかった。


 グルルルル…………。


「て、てめえらも加勢しろ! こいつは結構強い魔物だ!」


「ひええええ!! 無理だよ!」


「聖斗なんとかしてくれよ!」


「俺は遠くから弓で援護するぞ!」


「じゃあ俺も石を投げて……」


「お前は近接職だろ!?」


 強敵を前に物怖じし、まったく協力する気のないパーティメンバー。


「クッソォ……こいつらマジ使えねえ! 一旦撤退だ! 逃げるんじゃなく、次の勝利のための戦略的撤退だからな!」


 聖斗は叫び、熊の魔物に背を向けた。

 その瞬間、爪こそ当たらなかったが、強烈な一撃で聖斗の身体が前方に吹き飛んだ。


「痛ってて……。く、くそ……痛みで歩けねえ」


「聖斗!? 今すぐヒールするからね!」


 湯乃佳のジョブは聖女。

 聖女は、攻撃魔法と回復魔法に秀でた能力を持つ。


 場所を選ばず練習できるので、湯乃佳は回復魔法の基礎の基礎までは使えるようになっていた。


「おお……なんとか動ける。助かったぜ……。まったく、いきなり強敵に当たるとはついてなかったぜ。もしお荷物(ユート)を連れてきてたらこれで全滅だったかもな」


 大熊の魔物は、不思議と逃げ帰る聖斗たちを追いかけることはなかった。


「覚えてやがれ! しっかり立て直してぶっ殺してやるからな!」


 苦々しく吐き捨て、涙目敗走する聖斗たちなのだった——

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