第14話:白金獣魔師はゲットする
レーナはアイテムスロットから電話帳みたいな厚さの地図を取り出して、ビストリアのページを開いた。
ビストリアの地理を俯瞰して見ると、この村は四つのエリアに大分されていることがわかった。
居住地区・商業地区・行政地区・農業地区。
中央には冒険者ギルド——ここが俺たちの現在地だ。
「商業地区は北……ってことは多分こっちか」
「え、でもちゃんと調べてからいかないと迷子になっちゃいますよ!?」
「このくらいの規模の村で迷うこともないだろ? それに地図もあるしな」
「そ、そうですか……? ユートは凄いです!」
いや、それはレーナが方向音痴すぎるんじゃないか……?
というのは俺の胸の中にしまっておくことにしよう。
とはいえ、レーナの方向音痴がアレなだけではなく、俺がそこそこ地理に強いというのは確かにその通りだ。これについては自信がある。
なぜなら、ボッチだったせいで外を出歩くとなれば必ず一人。
頼れる人など存在しない。
中学の修学旅行はハブられて班行動をソロでこなした経験もある。
その辺の群れたリア充とは違った能力を身につけていたのがまさか異世界で通用するとまでは思わなかったが……。
「武器店、防具店……ん? 装備店ってなってるけどここか?」
地図上には武器店と装備店が二軒並んでいるはずだったのだが、付近には一軒しかそれらしい建物はない。
「ちょっと古い地図なので合併しちゃったのかもしれません。よくあることですよ!」
「そうなのか。まあ、一軒で済むならその方がありがたいしな」
これも陰キャボッチあるあるだと思うが、服を買いに行くというのが非常に面倒くさい。
俺がお洒落に興味がないというのもあるが、店で知り合いと会いたくないってのが大きい。
異世界に来ても、長年の感性ってものはなかなか変わらないみたいだ。
ガラン。
扉を開けて、装備店の中に入った。
店内はディスカウントストアかと見紛うほど大量の武器・防具・装飾品が陳列されていた。
天井以外は全部商品である。
ハシゴを使わないと手に取れないような高所にも置かれているが、あれは売る気があるんだろうか……。
「ユート、装備の選び方ってわかりますか?」
「いやまったく」
即答すると、レーナはキラキラした瞳で解説してくれた。
お洒落好きなのだろうか。なんにしてもめちゃくちゃ助かる。
「人によって選び方は違いますけど、まずはデザインです。冒険者って苦労も多いですけど、好みの武器や防具に出会えれば毎日楽しくなりますよ!」
「なるほど」
「実用性を重視するなら、特性を理解すると良いと思います。例えば……」
言いながら、レーナは一本の剣を指差した。正確には、剣の柄の部分だが。
「ここに、魔石が埋まっているのはわかりますよね」
「うん?」
知っているのは当然だとばかりに、レーナは言葉を続けた。
「さすがのユートも知っていると思いますが、魔石とは魔物から稀に取れる希少鉱石です。珍しいと言っても装備ってあまり買い替えないのでとんでもない値段にはなりませんけどね。……というものなんですけど、大丈夫ですよね?」
「お、おう……もちろんだ」
レーナのおかげで今知ったよ。
「基本的には、火・水・風・地・聖・闇の六属性から選ぶんです。例えば火の魔石がついた武器なら火属性攻撃が上がりますし、水属性のブーツを履けば水属性耐性が上がったりという効果がありますね。ユートの戦闘スタイルに合わせて上手く組み合わせれば冒険も楽になりますよ!」
「なるほどな。それで言うと……おっ、あれなんてかっこいいな。虹色に光ってるその武器」
俺は一本の漆黒の剣に目を止めた。
柄の魔石部分が高級感のある虹色に輝いており、他の剣とは違う独特の存在感があった。
「あー、それはダメですよ、ユート」
「なんでダメなんだ?」
「虹色の魔石は、六属性の魔石全部の性質を持つんです。つまり、あの剣一本を持てば全属性の攻撃力が上がるというわけです」
「それの何がダメなんだ? めちゃくちゃ良さそうじゃないか?」
「ペナルティがあるんです。持っているだけで大量の魔力を吸われるので、戦えない冒険者になっちゃいます。魔剣って呼ばれてるんですよ。あっ、装備にも魔装備があるので注意してくださいね。まあ、口で言ってもなかなかわからないと思うのでちょっとだけ持ってみるとすぐ分かりますよ」
レーナがそう言うので、俺は魔剣とやらを持ってみた。
特に、何か変化は感じられない。
「どうですか? 脱力感を感じてきましたよね?」
「いや全然」
「気分が悪くなるとダメなので剣を戻して……って、ええ!?」
「多分だけど、俺の魔力が多いから減っても減った感じがないんじゃないか?」
俺にはレッドの魔力が共有されているので、竜の魔力と強靭な回復速度を持っている。
割合で減るんじゃなく、あくまで普通の人間が持つにはしんどい……くらいだと回復速度の方が上回ってしまうんだろう。
「し、信じられないです……。魔剣が普通に使えるなら、それはもう最強です……! でも、ユートって魔法で戦わないんですか?」
「ああ。それは俺も思ったんだけど、例えばこうやって……右手で魔剣を持って、左手で魔法を撃つみたいな風にすれば両方使えると思うんだ」
剣を使ったことはないが、魔法が使えた時みたいに剣も使えそうな感覚がある。
それを試してみたい——というのが正直なところだった。
「そんな無茶苦茶な!?」
「なんか他の剣に比べて安いみたいだし、試しにやってみたいと思う」
「まあ、ユートのお金ですし……ユートがそれでいいなら私が口を挟む理由はありませんが……」
「レーナのおかげでデメリットが分かった上で買えるのはラッキーだったよ。ありがとな」
こうして、俺は魔剣と魔装備を購入した。
全部揃えても金貨10枚と、他の装備に比べて十分の一くらいの安さだったし、良い買い物ができたみたいだ。
ただし、魔装備は上下一体の黒コートスタイルしかないらしく、全身黒ずくめである。
かっこいいのは良いんだが、ちょっと中二病くさい気もする。
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