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 外伝 激戦

登場人物


ソフィア・ベルクマン…両親を魔族に殺され孤児となったところをミラに見いだされ最後の内弟子として魔法を習う事になる、魔法に関しては天才的な才能を持ち、その才能を開花させる。


ミラ・スコット…世界を救った〈三英雄〉の一人、【深淵の魔女】の異名を取る大魔法使い、〈ミラ魔法学校〉の設立者にて総帥、何恁麼の弟子を育て優秀な魔法士を何人も輩出している。


イザベラ…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の長女、色白で金髪ロングの美人だが性格はきつく超の付く負けず嫌い、冷却魔法を得意としていて【氷雪の魔女】の異名を持つ。


エリザベート…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の次女、赤毛のくせ毛でつり目が特徴のエセ関西弁を使うチャキチャキ娘、電撃系の魔法を得意としており【雷撃姫】異名を持つ。


アニー…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の三女、南方の国出身で色黒の肌が特徴的な体躯会計系美少女、エセ博多弁を使うイケイケ娘、風系魔法を得意としており【南の風乙女】の異名を持つ。


ローズ…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の四女、黒髪ロングの和風美人、切れ長の目で冷たく微笑む笑顔が特徴でエセ京都弁を使ういけず女、暗黒魔法を得意としており【暗黒女神】の異名を持つ。


ヴィクトリア…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の五女、オレンジ色の短髪が特徴の元気娘、語尾に〈にゃ〉と付けるのが特徴的で火炎魔法を得意としており【爆炎天使】の異名を持つ。


アリス…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の六女、青みがっかった髪に青い目が特徴の美女、見た目は先祖にエルフがおりその影響だと言われている、ソフィアと同じ施設出身であり、ソフィアに唯一優しくしてくれる人物、神聖魔法を得意としており【慈愛聖母】の異名を持つ。


カトリーヌ…ミラの内弟子の一人【ミラの七星】と呼ばれる高弟の中の七女、金髪縦ロールで大きな目が特徴のロり娘、背はソフィアより10cm程低くいつもロり系ファッションを身に付けてる、水系魔法が得意で【水神天女】の異名を持つ。

魔法討論会を終え、その日を境にソフィアの周りを取り巻く環境は


ガラリと変わった、いつものように雑用をこなそうとすると周りの者達が


率先して手伝ってくれるのである。


「こんな雑用は私達に任せて、あなたはもっとすることがあるんでしょ!?」


「もし何か雑用を押し付けられたら私達に言って、何でも協力するわ」


皆がソフィアを認め暖かく接してくれた、そしてそれとは対照的に七星への当たりが


厳しいものとなっていった、ソフィアへの仕打ちを快く思わない者達が七星メンバー達を


敵視し抗議する様に無言の態度でそれを示した、急激な風向きの変化に戸惑う


七星のメンバー達、六人は会議室に集まり苛立ちをぶつけた。


「何なんどすえ、普段でしたら私達と目も合わせられない


 ぶさいくはん達が急にいちびって、ほんま堪忍して欲しいわ」


「でもマズいことになったにゃ?もう空気が私達を完全な悪者扱いしてるにゃ‼」


ローズとヴィクトリアがそう言うとエリザベートが口を開いた。


「明後日にはアリスも帰ってくるはずや、このままの空気はあかん


 先生の耳にでも入ったらヤバいで、はよ何とかせんと


 めっちゃおもろない事になるで……


 ほんま厄介やわイザベラ姉さん、どないする?」


目を閉じジッと皆の意見を聞いていたイザベラが両目を大きく見開き皆に告げた


「もうこうなったら私達が追い出されるか、あの子を追い出すかの二択しかないよ


 みんな腹を決めな、私に考えがある……」


メンバー達は身を寄せ合いイザベラの話に耳を傾けた。


「あの子は確かに凄い才能がある、悔しいがそれは認めよう、しかし実戦経験はまだない


 そこに私達に付け入るスキがある、あの子を呼び出し実戦形式でぶちのめすの


 あの子と違って私達は何度も実践を潜り抜けてきている、戦いは場数よこうなったら


 なりふり構わず自分たちの有利で戦える土俵で戦うのよ、わかった!?」


コクリとうなづくメンバー達、そんな中で三女ローズが手を上げた


「あの~いくら何でもたった一人相手に六人総がかりで挑むってことは


 なかとよね?」


その言葉を聞いて怒りの表情で立ち上がるカトリーヌ。


「そんな訳ないじゃない、戦うといっても一人づつに決まってるでしょ


 私達は誉れ高き【ミラの七星】よそんな恥ずかしいことできるわけ


 ないじゃん!!」


姉であるローズに凄い剣幕でそう言い放ち、腕組みしながら


ドカッと椅子に座り直すカトリーヌ。


「じゃあその方針で行くとして、どないしてソフィアをおびき出します姉さん?


 昨日の明日だとさすがにソフィアも警戒するかもしれへんし……」


心配げに尋ねるエリザベート、そこに再びカトリーヌが口をはさんだ。


「そのことについては私に任せて頂戴、必ずあいつを引っ張ってくるわ」


カトリーヌが話し終わると一度皆を見渡し、再びイザベラが口を開く。


「決行は明日の夜8時、ソフィアを呼び出し校内の闘技場にて決着をつけるいいね!!」


七星メンバー達はお互いの顔を見合わせ、大きくうなづいた。


翌日の夜、ソフィアが仕事を終えシャワーを浴びた後


着替えて部屋に戻ろうとした時ある事に気づき絶望的な表情を浮かべた。


「無い、先生からいただいたイヤリングが!?


 そんな……あれを失くしたなんて!?」


脱衣所の床を這いつくばる様に必死で探し回るソフィア


その時カトリーヌが不敵な笑みを浮かべながら姿を見せた。


「あなたの探し物の居場所は私が知っているわ


 返してほしければ付いてきなさい」


含みのある笑みを浮かべソフィアを見下ろすカトリーヌ。


「あなたがやったんですかカトリーヌ姉さん


 いくらあなたでも許しませんよ‼」


珍しく怒りの表情を見せ睨みつけるソフィア


カトリーヌも一瞬ムッとした表情を見せたものの


冷静さを装いクルリと背中を向けた。


「黙って付いてきなさい、そうすればちゃんと返してあげるわよ」


カトリーヌに案内されたどり着いたのは校内の闘技場だった


ここは生徒たちの実戦練習や魔法実験などにも使われる場所で


非常に頑丈に作られておりおまけに完全防音というイザベラ達には


非情に都合のいい場所だった、ソフィアが到着するとアリスを除く


七星メンバー達が待ち構えていた、それを厳しい目で見つめるソフィア


「姉さんたちの仕業だったんですか……みんなでグルだったという訳ですね……」


「グルとはご挨拶ですなあ、うちらははあんさんに実践訓練を


 してあげようって親切で言うてますのに、そないな邪推はあきまへんな


 あんさんは魔法が大好きみたいどすからな、ワザワザ相手してくれはる


 姉さんたちに〈おおきに〉言うぐらいは礼儀どすえ、まあ少々


 キツイお稽古ごとになるやもしれへんけどその時は堪忍やで


 まあせいぜいおきりばりやす」


含み笑いを浮かべながらサディスティックな表情を浮かべる四女ローズ。


その態度に怒りを覚えながらも必死で冷静に対応するソフィア。


「確か予定にない闘技場の使用は先生の許可か七星全員の許可が必要なはずですよね?


 アリスさんがいない今、その許可は下りないはずですが?」


その問いかけにイザベラがクスリと笑う


「私達六人がいいって言っているんだからいいのよ、それとも私達が教えてあげるって


 言っているのに断るつもり?怖くなっちゃったのかなソフィアちゃんは?」


その挑発的な言葉に怒りが爆発しそうになりながらもミラを悲しませたくない


という思いから必死で唇を噛みしめて耐えるソフィア。


「実践訓練はちゃんとした手続きを踏んでからにしてください


 これでも私は怒っているんですよ、あなた方はその規則を守らせる側に


 いるはずですよね?こんな事をして恥ずかしくないんですか!?」


その言葉に思わずいきり立つ七星メンバー達、そしてカトリーヌがポケットから


あるものを取り出した、それはソフィアのイヤリングである。


「そんなにやる気がないならやる気を起こさせてあげるわよ、ありがたく思いなさい‼」


そういうと掌の上のイヤリングが炎に包まれた、ニヤつきながら炎を見つめるカトリーヌ。


それとは対照的に絶望的な表情を浮かべ悲鳴を上げるソフィア。


「嫌ーーー!!先生にもらったイヤリングが‼」


カトリーヌの掌の上であっという間に灰になったイヤリング、それを嬉しそうに


見つめながらソフィアに向かって言い放つ。


「アンタが聞き分けのないことを言うから大事な大事なイヤリングが燃えちゃったじゃない


 アンタが悪いのよ、まあ今までの事を土下座して謝るなら今回は勘弁してあげるわ」


悪びれもせずそう言い放つカトリーヌ、ソフィアも既に我慢の限界だった。


「そんなに私と戦いたいの?いいわよ相手してあげる……元々私はそんなに


 気の長い女じゃないし、アンタ達には恨み辛みが蓄積していて


 もうオーバーフロー状態だったからね、これで心置きなく


 アンタ達をぶちのめしてやれるわ、ギッタギタにしてあげるから


 さっさとかかってきたらどうですかこのクズ共‼」


怒りの表情を向け右手で手招きするソフィア、その挑発的な態度に怒り狂う七星達


「ああ、誰に向かってモノを言っていると、この馬鹿ちんが‼」


「最初に私に行かせて頂戴にゃ、イザベラ姉さま‼」


「生意気どすえ、あんさんはうちがぶちのめしてさしあげますよって


 ヴィクトリアはんは私の後にしなんせ‼」


「姉さま達こそ引っ込んでいて、あいつはイヤリングを燃やした


 私に用があるはずよだから、私が先に行くわよ‼」


ソフィアの挑発に怒り心頭のメンバー達、特にアニー、ヴィクトリア


ローズ、カトリーヌは自分が一番手だと主張して譲る気もなかった


そんな四人を見てワザと大袈裟にため息をつくソフィア。


「誰が最初とかどうでもいいわよ、アンタらザコなんか


 一々相手にしていられないわ、どうせならいっぺんにかかってきなさい


 悪党なら最後まで悪党らしくしたらどうなのよ?」


あまりの屈辱に言葉すら出ないメンバー達、今までエリート中のエリートとして


持ち上げられてきた彼女達にとってこれほど侮辱され舐められたことは無い


顔は紅潮し体は怒りによってワナワナと怒りで震えた。


そしてソフィアはトドメともいえる言葉を発する。


「だから貴方達は先生に見限られるのよ、先生はこうおっしゃってました


 〈あの子たちよりソフィアは数倍素質がある〉って、そしてこうも言っていたわ


 〈あなたに比べれば貴方達はクズ同然だと……〉まあその通りなんで


 私も賛同したんですけどねクスクス」


卑下した目で七星達を見つめあざけるように笑うソフィア


その言葉に七星の四人は我慢の限界を迎えた。


「なんばいいよっと、先生がそげなこと言う訳なか、バリムカつく‼」


「えーかげんにさらせやコラ、いわすぞ‼」


「その高慢ちきな鼻をへし折ってやるにゃ、あの世で後悔するがいいにゃ‼」


「許さない、絶対に許さないよソフィアーーー!!」


アニー、ローズ、ヴィクトリア、カトリーヌの四人は怒りに任せ飛び出してきた。


「おや?四人でいいのですか?私は六人がかりで全然構いませんけど……


 まあいいでしょう、さて戦う前に貴方達に贈る言葉があります


 知性の足らない貴方達はしらないかもしれないけど


 〈鎧袖一触〉って言葉をご存じですか?」


これでもかという程、挑発を繰り返すソフィア、カトリーヌ達四人は頭に血が上り


今にも仕掛けそうな勢いである、しかしそんなソフィアの言動を見て


イザベラがふと違和感を感じる。


『なぜソフィアはあれほどまでに挑発行為を繰り返す?


 あれじゃあ本当に全員でかかって来いと言わんばかりじゃないか……


 確かに一人づつ戦ったら最後には確実に魔力切れを起こす


 我々の狙いもそこにあった、でもいくら何でも一度に私達全員を


 相手にしたら魔力切れどころか普通に勝ち目がない事は明白だ


 そんなことがわからない程馬鹿じゃないはず……


 それとも本当に全員を一度に相手にして勝てるとでも思っているの?


 だとしたらうぬぼれにもほどがあるわよソフィア!?』


イザベラの懸念をよそに、出てきた四人はソフィアを中心に四方を囲むように立ち構えた


「これは【四精包囲陣】といって四方からの魔法十字攻撃を目的に作られた


 必殺の陣形よ、かつてこの陣形を破った者はいないわ


 貴方に最後のチャンスを上げる、今土下座して謝るなら半殺しで


 勘弁してあげる、どうあなたも命は惜しいでしょ?」


既に勝ちを確信しているカトリーヌが最終勧告とも言える言葉を告げる。


しかしソフィアは全く意に介さず、それをあざ笑うかのように言い放った。


「そんなことを言っている暇があるのならさっさと仕掛けてくればいいのに


 だからあなた方は先生に見限られるのですよ、本当に頭も残念で


 可愛そうな人達ね、クスクス」


これでもかという程の侮辱のセリフにカトリーヌを始め四人は完全にブチ切れた。


「殺してやる‼」


「オドレは絶対に殺す‼」


「絶対許さないにゃー‼」


「たいがいにせいや、どげな方法で殺したろうもん‼」


四人が戦闘態勢に入った、するとソフィアもすかさず仕掛ける


「【霧雲覆潜霜断消】……」


ソフィアはつぶやくように言葉を発すると突然ソフィアの周りに


大量の霧が発生した、それはあっという間に辺り一面を霧で覆いつくし


全員を真っ白な世界へと誘った。


「はあ!?それで隠れたつもりなの!?そんなんが通用する程


 私達は甘くないわよ‼」


その魔法を見てカトリーヌがあざ笑うかのように言い放った


カトリーヌ達と出て行くのを自重していたエリザベートが


怪訝そうな表情で隣のイザベラに問いかけた。


「ソフィアは一体どういうつもりやと思う姉さん?


 この【霧雲覆潜霜断消】は大量に発生する霧によって自分の姿と気配を消す


 魔法のはずやけど、魔力感知ができるうちらにとって


 視認できないという事はそないに重要ではないやろ?


 比較的魔力消費もでかい魔法やし……先ほどの挑発行為も含めて


 ソフィアの言動はどうにも腑に落ちんで、一体何を考えてんねん?」


全く同じことを考えていたイザベラはソフィアの狙いを必死で考えていた。


『何を企んでいるソフィア……挑発行為、四精包囲陣、霧の魔法


 魔力感知……』


その時、イザベラが何かに気が付いた様子で”あっ”と叫んだ。


「何やわかったんか、イザベラ姉さん!?」


「今あの子達は霧の中にいるソフィアを魔力感知を使って認識し


 四方から攻撃しているはずよね?」


「そのはずや、それがどうかしたんか?」


「ソフィアを囲む様に四方から攻撃を加えているという事は


 裏を返せば反対側には味方がいるって事よね?もし


 何らかの手段で魔力感知を狂わせることができるとしたら……」


エリザベートもようやくイザベラの言わんとしていることが分かり


驚愕の表情を浮かべた。


「まさか、【四精包囲陣】を逆に利用して……」


その問いかけにイザベラはコクリとうなづいた。


「ソフィアの狙いは霧を使い自分の姿と気配を隠し、魔力探知を狂わせて


 【四精包囲陣】を逆手に取ったフレンドリーファイア……


 つまり同士討ち狙いよ」


それを聞いたエリザベートの顔から血の気が引く。


「同士討ち狙いやと!?だからアイツは挑発行為で全員を


 引っ張り出そうとしたんかい!?魔力温存も考慮して、なんちゅう奴や……


 はっ、あかん、はよみんなを止めへんと‼」


そんなエリザベートの思いとは裏腹にすでに戦闘は始まっており


闘技場には派手な爆発音や炸裂音が響き渡っていてその戦闘の激しさを


物語っていた、エリザベートは四人に対し必死に静止を呼びかけるが


残念ながらその声は攻撃による爆音で届かなかった


一方ソフィアを攻撃しているつもりの四人はまさか味方を相手にしているとは


露知らず、激しい攻防を繰り広げていたアニー、ローズ、ヴィクトリアは


既に倒れ唯一残っているのはカトリーヌのみであった。


「はぁはぁはぁ……こっちもかなりダメージを食らったけど


 アイツの魔力反応も無くなった……とうとうやったのかしら……」


唯一残っていたカトリーヌもダメージの蓄積と魔力の消耗により


立っているのがやっとの状態である、すると霧の中から


静かに近づいてくる影が見えた、カトリーヌは目を凝らして前を見つめる。


「誰?イザベラ姉さん?それともローズ姉さんたちなの!?」


しかしカトリーヌは目の前に現れた人物を言見て愕然とする。


「何で……なんでアンタなのよ!?」


霧の中から姿を現したのはソフィアであった、既に限界を迎え


ボロボロの状態のカトリーヌを見下ろし、冷徹な視線を向けている


そして見たところ全くのノーダメージで汗すらかいていなかったのだ。


「何で私なのかはあの世で考えてください、ではお別れです


 さようならカトリーヌ姉さん……」


そう言い放つと右手を高く上げるソフィア、すると手のひらから


真っ赤に燃え盛る火球が発生しどんどんと大きくなっていく


目の前で巨大化していく火球の明かりでカトリーヌの顔が赤く照らされ


熱により顔がほてってくる、しかしもう動くことも出来ないカトリーヌは


悔し涙を流しながらソフィアの顔を睨みつけ呪詛の様に同じ言葉を繰り返した。


「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……」


もう今にも火球がカトリーヌを飲み込むか!?と思った瞬間


凄まじい落雷が上空から降り注ぎ、ソフィアの魔法の霧を文字通り霧散させた。


「無事かい、カトリーヌ!?」


雷撃の衝撃で発生していた火球も消し飛び、カトリーヌとソフィアの間に


割って入る形で前に立ち塞がるエリザベート、既に死を覚悟していたカトリーヌは


安堵からか思わず涙があふれだす、しかし霧が吹き飛び周りが視界に入ると


そこにはアニー、ローズ、ヴィクトリアが三人とも倒れているのが目に入ってきた


その光景を見て再び口惜しさがこみあげてくる。


「何でよ……何で私達だけがダメージを負ってコイツは無傷なのよ!?


 一体コイツとあたしたちの何が違うっていうのよ‼」


魂の叫びともいえる言葉を恨み言の様に思い切りぶつけるカトリーヌ


それをジッと冷徹に見つめるソフィアからは何の反応もなかった


しかしそれを見かねたエリザベートが事の説明を始めた


「お前たちは霧によって視界と気配を絶たれた挙句に何やらわからんが


 魔力感知を狂わされたんや……


 それで四精包囲陣を逆手に取られてしもうて同士討ちをさせられとったんや‼」


その事実を聞かされ愕然とするカトリーヌ、その衝撃の事実に再び大量の涙があふれだしてくる。


「何よそれ、何なのよそれは!?……じゃあ最初から私達は


 こいつの掌の上でまんまと踊らされていたって事!?そんな事って……


 そんな事って……」


もはや戦闘意欲すら失くしてしまったカトリーヌを尻目に、戦う意欲満々のエリザベート。


「もうネタバレが済んだ以上、オドレの作戦には引っかからへんでソフィア


 そのけったくそ悪い挑発も、もう意味無いで、これからシバキ回したるさかい


 覚悟せいや、いくらオドレが強大な魔力を持っているからといって


 もうそなんぼか魔力を消耗しているはずや、その状態で私と


 イザベラ姉さんを二人相手にする魔力はもう残っへんやろ


 私は徹底的にお前の魔力を消耗させる為に戦うで、そやったら


 もし私が倒れてもイザベラ姉さんがお前を倒す、七星は負けないんや‼」


エリザベートは決死の覚悟でソフィアに挑む、それは相打ちになろうが捨て石になろうが


かまわないという決意の表れであった、しかしソフィアはそんなエリザベートに対し


軽いため息のをつくと、憐れむような視線を向けた。


「覚悟のほどは立派だけどもうあなたは詰んでいるわ、随分魔力消費の事を


 心配してくれたみたいだけど、先ほどのあなたの雷撃の魔力を応用させて


 もらったんで、どうぞ安心して死んでください、エリザベート姉さん」


「何言うてんのや、オドレは!?」


言っている意味が分からず怪訝そうな表情を浮かべるエリザベート。


その時、ある事に気が付いた、それは自分たちの周りに直径1㎝程の


透明な球体が無数に浮遊していたのだ。


「な、なんやコレ!?」


正体不明の球体を見て戸惑うエリザベート、フワフワと空中に浮かぶ


無数の球体達はこの殺伐とした空気の中でもどこか幻想的な雰囲気を


感じさせた、ソフィアの周りを取り囲む様に浮遊する謎の球体


視線を左右に動かしながら謎の球体の正体を探るエリザベート


困惑するエリザベートに対しソフィアがサディスティックな笑みを


浮かべていると、何かに気が付いたカトリーヌが大声でエリザベートに告げた。


「これ……この透明な球体は水よ、エリザベート姉さん‼」


「水やて、何で水がこないな状態で浮遊してんねん!?」


エリザベートとカトリーヌが困惑する中、クスリと笑い口を開いたソフィア。


「正解です、さすがはカトリーヌ姉さん【水神天女】と言われている


 水のエキスパートだけはあるわね、ではヒントをあげましょうか


 先ほどエリザベート姉さんは私の霧を雷撃で吹き飛ばしましたが


 さて問題です、霧とは一体何でできているでしょうか?」


どこかふざけているかのようなソフィアの態度に思わず苛立ちを隠せないエリザベート。


「舐めているのかボケ‼その程度の事、私が知らないわけないやろうが


 霧とは大気に含まれている水蒸気が何らかの理由で温度が下がって


 露天温度に達した際に小さな水粒となって空中に浮遊するものやないかい‼


 水滴が浮遊……はっ、まさかこれは!?」


エリザベートの顔から一瞬で血の気が引く。


「どうやらこの子達の正体がわかったようね、だったらなぜこの子達が


 浮遊しているのか?エリザベート姉さんならもうおわかりよね?」


エリザベートはゴクリと息を飲み静かに答えた。


「イオンクラフトか!?」


その答えにニコリと笑うソフィア。


「正解です、ではネタバレも済んだことですしもう終わりにしましょう


 行きなさいあなた達、エリザベート姉さんのもとに……」


浮遊していた無数の水の球体がゆっくりと動き出す、それはまるで水の球体自体が


意志を持っているかのようにソフィアの命に従いゆっくりと


エリザベートに近づいて行った。


「うわあぁぁ~よせ止めろ、来るなやーー!!」


エリザベートはそう叫びながら電撃で近づいてくる球体を次々と撃ち落としていく


しかし水の球体はまだまだ無数にあり撃ち落としても撃ち落としても


雲霞のごとく押し寄せた、そしてついに一つの球体がエリザベートの体に接触した。


「ぎゃああぁぁぁぁーー!!」


絶叫に近い悲鳴を上げるエリザベート、はたで見ていたカトリーヌには


何が起こっているのか全く理解できない、苦しむエリザベートを呆然と見つめていた。


「何でエリザベート姉さんはあんなに苦しんでいるの?たかだか水じゃない!?」


するとソフィアがクスリと笑い口を開いた。


「不勉強なカトリーヌ姉さんに補足説明をいたしましょうか


 あれはイオンクラフト効果によって浮遊している水の球体なの


 イオンクラフトは別名”反重力リフター”と呼ばれていてね


 特定の物に精霊の作用で発生させた物質を加え、それを高電圧で


 コーティングしてやるとイオン風というモノが発生しそれが


 物体を浮遊させるの、おもしろいでしょ」


ギクリとした顔で思わずソフィアを見つめるカトリーヌ。


「高電圧!?じゃああの水の球体は……」


「そうよ、先ほどエリザベート姉さんが放った雷撃の魔力を利用させてもらって


 高電圧へと変換させてもらったわ、水は私の霧の魔法から流用したものだし


 魔力温存の為に利用できるモノは全て利用させてもらったのよ


 エコ戦略とでも名付けようかしらね、私はもう一人倒さなければいけないので


 貴方達に魔力を使っている余裕は無いの、悪いわね」


何事もなかったかのようにさらりと説明するソフィア


「じゃあエリザベート姉さんは自分の放った電撃を自分で浴びているの!?」


その問いには答えず嬉しそうに笑うソフィア、その笑顔に思わずゾッとするカトリーヌ


そうしているうちにも次々と襲い掛かる水の球体、もはやエリザベートには戦う力は


残っていなかった、倒れ込んでいるエリザベートに容赦なく電撃を浴びせる水の球体達。


「ぎゃああぁぁぁ~~~~!!」


悶絶しながら叫ぶエリザベートの悲鳴が場内に響き渡りそれを冷静に見つめるソフィア。


「やめてよ、このままじゃエリザベート姉さんが死んじゃう


 お願いだからもうやめてよ……」


カトリーヌは涙目になりながらエリザベートの命乞いをするが


まるで意に介さないソフィア、そしてカトリーヌの方を向き


静かに語り始めた。


「何を言っているのよあなたは……あなた方は私を殺そうとしたのよ


 だったら殺される覚悟くらいはあるんでしょ、自分は人を殺しても


 殺されるのは御免とか……そんな都合のいい話は無いのよ


 先生も言っていたじゃない、自分に敵意を持って向かって来る者には


 容赦するなって、まあ待っていてよ、エリザベート姉さんを倒した後


 イザベラ姉さんも倒して、その後にでもゆっくり


 カトリーヌ姉さんも殺してあげるから……」


ソフィアのあたかも簡単な用事を済ますかのような淡々とした口調に寒気が走るカトリーヌ


自分を見つめるその目はまるで虫けらでも見つめているかのような冷たい視線であった


その瞬間、巨大な冷気が辺りを包み込み空中の水の球体を一瞬で凍らせる


何が起きたのかわからず呆気にとられるカトリーヌを尻目に


動揺することもなく微動だにしないまま視線だけを横に向けるソフィア。


「やっと出てきましたかイザベラ姉さん、随分とゆっくりしたご登場で……」


イザベラは倒れ込んでいるエリザベートやアニー、ローズ、ヴィクトリアに視線を移し


歯ぎしりする、怒りで体は小刻みに震え殺意を持った視線でソフィアを睨みつけた


「アンタはよくも妹たちを……絶対に許さないよ‼」


その言葉にソフィアは呆れ顔でため息をついた。


「私だってその妹なんですけどね……まあいいけど


 じゃあ姉妹喧嘩の最終章と行きましょうかラスボスさん」


ソフィアは余裕の態度で右手を前に出しかかってこいとばかりに手招きした


その不敵な態度に湧き上がる怒りを抑えられないイザベラ。


「アンタなんか妹なもんか……私の妹は、妹達はお前に倒された


 でもアンタらの思いは長女の私が受け取った、お姉ちゃんに任せな‼」


そのセリフを聞いて呆れたように目を閉じゆっくりと首を振るソフィア。


「それじゃあまるで私が悪者みたいじゃないのよ……いい事、イザベラ姉さん


 ご自分達が私に何をしたのかもうお忘れたの?ヤレヤレ言ってわからない人には


 実力をもって示しましょうか、いつでもいいですよかかってきなさい」


「見下してるんじゃないわよクソが‼【永久凍結陣】‼」


イザベラは無意識のうちに自分の持っている最大最強の魔法を放っていた


巨大な冷気の波が発生し一気に辺りの気温が下がる、それは津波の様に


ソフィアに向かって襲い掛かった、だがそれに呼応するかのように


ソフィアも動き出す。


「結局それなの?、だったら私も【永久凍結陣・改】‼」


ソフィアの唱えた魔法も同じように巨大な冷気の波が発生したが少し様相が違った


所々で青白いスパーク状の火花が発生しておりバチバチと音を立てて弾けていたのだ。


「くそっ、もう実戦投入できるのか、まだあれから二日しか経っていないのに


 ……この化け物め‼」


ソフィアの魔法を見て厳しい表情を浮かべ思わず悪態気味に吐き捨てるイザベラ


二つの巨大な冷気の波は激しくぶつかり合う、それはまるで生ているかのように


お互いがお互いを飲み込もうとしていた、冷気の波という荒れ狂う二頭の獣が


お互いの生存を賭け相手を葬り去ろうと暴れまわる


『負けられない、自分の魔法で他人に負けるなんて許されない、私は


 【ミラの七星】の長女【氷雪の魔女】イザベラ・エッシェンバッハよ‼』


決死の思いで戦いに挑むイザベラ、しかし戦いとは無情である


勝敗を決めるのは強い思いでも善悪でも経緯でもない、力である 


強い者が勝ち弱い者が負ける、それは太古の昔から決められている


絶対不変の法則、そして敗者の烙印がイザベラに押されようとしていた


徐々にイザベラの冷気の波がソフィアの波に飲まれ始めたのである


必死で抵抗しながらもがくようにうねり続けるイザベラの冷気の波


しかし青白いプラズマを発生させながら、ねじ伏せるように


イザベラの波を飲み込んでいくソフィアの波がどんどんとイザベラに近づいて来る。


「ちくしょう、ちくしょう……どうしてよ、どうして勝てないのよ!?」


悔し涙をにじませながら必死に踏ん張るイザベラだったが


バチバチと音を立てて迫り来る凶悪なソフィアの波の前に成す術もなかった。


「イザベラ姉さま‼」


必死で叫ぶカトリーヌの声が場内にむなしく響く、カトリーヌ以外の七星は


全て気を失い倒れている、もはや目の前に迫ったソフィアの波の前に


覚悟を決めたイザベラ、この魔法の事は誰よりも知っている


永久凍結陣に飲み込まれた者は一瞬で凍結した後粉々に砕け散る


死体のかけらも見つからない程細かい氷の粒子となって宙に霧散するのだ。


『先生すみません、勝手なことをして勝手に死んでいく愚かな娘を許してください


 もし生まれ変われるなら、またあなたの教え子になりたいです……』


心の中でミラに対し最後の言葉を呟くイザベラ


「そこまでだよ‼」


その時、場内に大きな声が響き二つの波が一瞬ではじけ飛んだ


何が起こったかわからないイザベラとソフィアは思わず声の方を向くと


そこにはアリスに肩を担がれたミラが立っていた。


「先生……どうしてここに?」


カトリーヌが目を丸くしてミラとアリスを見つめながらつぶやいた


「アリス、早くみんなに回復魔法を……」


ミラの指示に無言でうなづくアリス、右手を高々と上げ叫んだ


「【女神の祝福唄】‼」


アリスがそう叫ぶと倒れている者達やカトリーヌやイザベラに


光の粒が頭上から降り注いだ、すると倒れていた者達がムクリと起き上がり


キョロキョロと辺りを見回しはじめたのである。


「あれ、私達は一体?……」


まるで寝起きのようにボンヤリとした目で状況を確認する七星メンバー達


しかし視界にミラの姿が目に入ると一気に目が覚めあわてて直立する。


「先生!?いや違うとです、これはその、なんばしようと?と聞かれても


 特別な訓練をしたよかろうもんと言い出した結果、みんなで模擬戦でも


 やろうやあ~という流れに……」


慌てて弁明しようとしたアニー、しかし言い訳をする前にミラに一喝された


「おだまりアニー‼そしてイザベラ、エリザベート、ローズ、ヴィクトリアにカトリーヌ


 私が何にも知らないとでも思っていたのかい、このバカ娘たちが‼」


七星メンバー達はもはや何も言えなかった、怒られた悪戯っ子の様にうなだれる姉妹達


そんな七星のメンバー達を呆れたように見つめるミラ。


「どこをどう間違ってこんな風になっちまったのかねぇ……私は情けないよ


 アンタらにはちゃんと人の道も教えたつもりだったが、私の教え方が


 間違っていたんだねぇ……」


悲しげに首を振るミラ、七星のメンバー達はミラの顔をまともに見れなかった


「多少のいがみ合い程度なら今後の人生勉強になるし自分達でどう解決するのか


 見届けるつもりだったけど、まさかこんな事態にまでなるとはね……


 アンタら一体ソフィアの何がそんなに気に入らないんだい?」


バツが悪くて中々言い出せなかったメンバー達だったが意を決するかのように


イザベラが皆の声を代表するかのように発言した。


「ソフィアのせいで先生は体を壊しました……先生は私達にはないほど


 熱心にソフィアを教えその結果先生は……悔しかったんです


 先生は私達にはあんなに熱心に教えてはくれませんでした


 それが悔しくて妬ましくてつい……」


イザベラは理由を話しながらボロボロと涙を流していた


そこにエリザベートも続く。


「先生、先生はホンマに私達の事なんか今ではどうでもええと


 思ってはるんですか?ソフィアがいれば私達なんかいらへんと……」


皆が話した意外な理由にミラは驚きの表情を浮かべる


てっきりソフィアの才能に嫉妬したイザベラ達が自分たちの地位を守る為に


ソフィアを排除しようと動いていたと想像していたからである。


「何言っているんだい、みんな私の教え子だ、上も下もあるもんか


 そんな事ぐらいわかるだろう!?」


アニーもボロボロ涙を流しながら訴えるように話し始めた。


「だげん、だげん先生はソフィアにだけ自分のイヤリングを…


 やけんソフィアがばり可愛いけんあげたんだろうもんと……


 私達だってもらってないばい……そんなのズルかよ


 悔しかったんよ、ソフィアだけ先生に……」


その言葉に呆れ顔で皆を見つめるミラ。


「何言っているんだい、アンタたちには卒業祝いとしてもっと高価で新品の物を


 あげたじゃないか!?あんな使い古しで大した効果もないイヤリングなんて……」


そこにカトリーヌが口をはさむ、首を激しく振りながら訴えるようにしゃべり始めた。


「私だって先生の使っている物が欲しかった、でもそんな我がまま言うわけにいかない


 と思って我慢していたの、でもソフィアは先生のイヤリングを……まるで


 〈もう先生には必要ないでしょ〉と言っている様に見えたのよ


 ソフィアのせいで先生は体を壊したのに…許せなかった


 先生をこんな風にしておいて自分だけ……」


カトリーヌも言葉を詰まらせそれ以上しゃべることができなかった


ミラが皆を見渡すと七星メンバー全員がボロボロと涙を流しその目は


”皆思いは同じ”と訴えている様であった


ミラは自分も大きな勘違いをしていたことを始めて知った、その理由に


呆れながらも嬉しさがこみあげてくる、涙が止まらないカトリーヌを


そっと抱きしめるミラ。


「本当に馬鹿な子達だよ……ソフィアに対して特別な教え方をしたのは


 私の体がいつまで持つのかわからなかったからであって時間的な問題さ


 贔屓したわけでも何でもないよ、むしろソフィアにはアンタらより


 厳しくしてたくらいさね、こんな老いぼれの所持品でよければ


 いくらでも持っていきなさい、本当にアンタたちは……


 早とちりで短気で負けず嫌いで思い込みが激しくて……


 血も繋がっていないのにおかしなところばっかり私に似て


 本当にしょうがない娘たちだよ」


その言葉に七星の六人は一斉にミラに抱き着き大泣きした


まるで小さな子供の様に人目もはばからずワンワンと大声で泣いた


そんな教え子たちを見つめるミラの目にも光るものがあった


一通り大泣きした七星メンバー達はようやく冷静さを取り戻す


その瞬間、ミラがよろけて床に倒れた、皆が動揺する中イザベラが大声で叫ぶ。


「早く先生を病室へ、アリスありったけの回復魔法を先生に


 あとエリザベート神官を呼んできてちょうだい、時間外とか


 ゴタゴタ言ったら殴り倒してでも連れてきなさい


 みんなは先生を運ぶのを手伝って、早くしなさい‼」


皆がミラを囲むように近づき心配そうに顔を覗き込む


ミラは力なく笑うと皆を見渡す。


「アンタら大げさなんだよ、ちょっと疲れただけさね……


 あとは任せたよ、私はもう口は出さない、今後の事は全て


 ンタ達で決めな、それでどういう結果が出てもかまわない


 ただ自分達の誇りにかけて恥ずかしくない行動をしなさい、いいね」


そう告げると皆に寄り添われ病室へと運ばれていくミラ


そんな皆の姿を見ながら一人付いていかずに闘技場に残るソフィア


一緒に行きたい気持ちは山々だが自分がいると場が微妙な空気になることを


考慮し遠慮する事にした、皆が足早に闘技場を後にする中


最後尾にいたカトリーヌがふと足を止めた


ソフィアに背中を見せたまましばらくジッと動かなかったが


突然クルリと振り向きソフィアのところへ近づいてきた、何事か!?


と思い警戒しているとカトリーヌはソフィアと目を合わせないように


顔を背けながらも目の前に立つ、するとポケットからあるものを取り出し


ソフィアに手渡すと無言のまま急いで走り去っていった


ソフィアは不思議そうな顔でカトリーヌの後姿を見送り手渡された物を見て


驚きの表情を見せる、それはミラからもらったイヤリングであった


大事そうにハンカチで包まれており傷一つついていなかった


カトリーヌが燃やしたイヤリングはダミーであり本物はちゃんと


大切に保管されていたのだ渡されたイヤリングを胸に抱きしめ安堵するソフィア。


「良かった……本当に良かった……」


先ほどまで激しい戦闘が行われていたとは思えない程、闘技場は静寂を取り戻していた。



















































 




 




















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