表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

戦闘開始

登場人物


リナ・オースティン…剣聖ベルトランの娘、女性の身でありながら若干十四歳で上眼上陰流の免許皆伝を習得した天才剣士、〈理想の男性は兄〉と言い切る程のブラコンだが男性に求める条件は低く〈男は一つでもいいところがあればいい〉というモノ、背は低いがアイドル張りの可愛い顔をしており小柄な体には似つかわしくないグラマラスなボディをしている、サバサバしている性格であまり物事を深く考えない、滅多に怒らないが剣を持つと人が変わる。




ソフィア・ベルクマン…〈深淵の魔女〉ミラの最後の内弟子、天才的な頭脳を持ちずば抜けた魔法の才能を持っている、長い黒髪に整った顔立ち、スレンダーなボディとモデルばりの容姿をしていて〈息が止まる程美しい〉と評される美少女だが、感情の起伏が激しく激怒したり激しく落ち込んだりすることも多い、相棒のリナと違い家事はまるでダメで特に料理は壊滅的、思い込みが激しく惚れっぽい性格で妄想癖もあるという、いわゆる残念美少女。




グッドリッジ・ケンバートン…世界を救った三英雄の一人で神の知恵袋と呼ばれた僧侶、第一線を退いてからは冒険者組織アグムを立ち上げ大勢の冒険者の統括をしている、三英雄の仲間だったベルトランとミラからそれぞれリナとソフィアを預かり、二人を組ませたが常に問題を起こすのでいつも頭を抱えている。

リナとソフィアが皆と全く別の思いを抱きながらバチバチと


火花を散らせていた頃、その姿を見たベルゲンディードは


馬の手綱を握る手に思わず力が入る。


『こんなうら若き女性がこれほどの闘志をもって我々を守ろうとしてくれているのだ


 私が弱気になってどうする、必ず無事にゲルムガルト帝国にたどり着き会談を成功に


 導いてみせる、全世界の人間の為に必ず!!』


無論二人には全人類の命運など全く頭になく不謹慎で狡猾な


考えの元に闘志を燃やしていることなぞ知る由もなかった。


ウレスコル原野の霧の中を慎重に進んでいく一行だったが危惧していた敵襲もなく


どうやら無事でこの最難関を抜けられそうだと一同ホッと胸をなでおろしていた頃


先頭を進むリーダー、アイゼナッハが皆に声をかけた。


「このウレスコル原野を抜ければ開けた所に出る、そこまで警戒を怠らず決して油断するな


 そこに着いたら一旦昼食のための休息をとる、そこまで気を引き締めて行こう‼︎」


その呼びかけにアグム所属の冒険者達とモデリンド公国一行は大きく頷いた


もちろんリナとソフィアの二人の耳には入っていないことは言うまでもない


「やった、出口だ、ウレスコル原野を抜けたぞ‼︎」


先頭グループにいた冒険者の一人が叫んだ、霧も薄くなり、周りに生えていた木々も


ほとんどなくなって視界が開けてきた、その時である。


「全員、第一種警戒態勢を取れ、モデリンド公国の方々は下がって‼︎」


アイゼナッハの叫び声が響き渡る、指示通りに警戒態勢を取りながら


身構える冒険者達、モデリンド公国の人達は”何事か!?”とばかりに不安感をつのらせた。


まだ薄い霧により完全に確認はできていなかったが


前方より凄まじい殺気を感じたのである


アイゼナッハは思わず腰の剣を抜刀し身構えるが


ただならぬ雰囲気を感じ背中に冷たい汗をかいていた


「なんだこの殺気は、十や二十じゃない・・・とんでもない数がいるぞ!?」


剣を握る手に思わず力が入る、霧が徐々に晴れてきて前方の視界がクリアになると


皆の目の前には信じられない光景が広がっていた、なんとそこにはすさまじい数の


魔族が待ち構えていたのである。


「待ち伏せ・・・だと!?」


目の前には大地を覆いつくすかのように無数のモンスターが行く手を阻んでいた


5mを越える大型の物や足が8本生えている物、巨大な牙や爪を持ち見るからに


獰猛そうなモンスター達がうなり声をあげながら虎視眈々と獲物である人間達を


見つめていた、その目には一切猶予も慈悲もなく、視界に映る者達は只々殺すべき敵であり


狩るべき獲物であり生きていくための餌であること以外、何の感情もないようだった


その無慈悲な視線は相対している人間達の心に恐怖を刻み込む


「全員戦闘態勢に入れ、隊列を乱すな、A級冒険者は私と共に前線で敵を


 食い止めるぞ、B級冒険者は我等の後ろでバックアップと共に第二線を


 張れ、C級冒険者は要人と共に避難し保護を頼む、D級冒険者は逃げろ」


アイゼナッハを先頭に迎撃態勢を取る上級冒険者達、モデリンド公国一行とCランク以下の


冒険者達を後方に下がらせる、冒険者の一人、金等級の魔法使いである


サンドラが思わずアイゼナッハに問いかけた。


「何で・・・何でこんなところに魔族がいるのよ!?


 ここはもう人間の勢力地のはず、いたとしても偶然遭遇した


 ごく少数のはずじゃない、なのに何で!?」


「わからん、しかし事実魔族がここにいるんだ、だったら我々がやることは一つ


 あいつらを蹴散らしてモデリンド公国の人達を無事に・・・」


アイゼナッハがそう言いかけている時、背中の方から金切声の様な悲鳴が聞こえてきた


アイゼナッハ達が驚いて振り向くと、後方の上空には魔族の大群が空を埋め尽くしていた


全身が黒く鋭い牙と爪を持っている、最大の特徴は蝙蝠のような羽が


生えていて皆自力で空を飛んでいるという事である、そして空からまるで


人間を物色するかのようにニヤニヤと見つめ〈ケケケケケ~~〉と


下卑た笑い声を出しながら舌なめずりしている、どうやって殺してやろうかとばかりに


愉悦に浸るようなその眼はまるでおもちゃを与えられた子供のように楽しげであり


残忍で残虐な本性を隠すことなくさらけ出していた


「なんで後方にも魔族が!?有り得ないわ」


魔法使いのサンドラが後ずさりしながら思わず口走る


アイゼナッハは一瞬呆然とするがすぐさま気を取り直し


歯ぎしりをして独り言のようにつぶやいた。


「馬鹿な、こんな場所で挟み撃ちに合うなんて


 これは情報が漏れていたとしか!?クソッ‼︎」


その完全に罠にハマった形の一同は圧倒的なまでの大軍を前にして


心に絶望感が漂い始める、モデリンド公国の人達を始め


そこにいたアグムの冒険者たちもパニック状態で


蜂の巣をつついたような騒ぎになり大混乱を起こしていた


そんな中、周りの騒ぎを仏頂面で見つめている者達がいた


もちろんリナとソフィアの二人である。


「せっかくこれからお弁当のアピールタイムだったのに・・・」


「全く空気読まない奴らよね、これだから嫌われてるのがわからないのかな!?」


二人は大きくため息をついた後、弁当をモデリンド公国の人達をのせた馬車に預けると


逃げる人達と反対方向へと歩き出す


「お二人とも、どこに行くんですか!?」


二人を心配しての事なのか、悲痛な表情を浮かべながらベルゲンディードが思わず問いかけた。


「まあ少々お待ちください、さっさと片付けてきますから」


「昨日も言いましたでしょ、私達がいる限り安全で快適な旅をお約束しますって」


あまりにあっさりと、それが当たり前であるかのように静かに言い放った二人は


魔族のいる方へと歩き始めた、そしてリナは歩きながらソフィアに話しかける。


「ああは言ったものの、前方に大型魔獣、後方に飛行タイプの魔族・・・


 どうするソフィア?」


「そうねぇ・・・」


ソフィアが少し考えている時、リナが嬉しそうな表情で提案する


「ねえ、こんな作戦どうかしら、まず前方のデカイ魔獣達を


 ケチョンケチョンにやっつけてその後、後方の飛んでる魔族達を


 ボッコボコにする・・・どう?完璧な作戦じゃない!?」


さも得意げに話すリナ対しソフィアは思わずため息をつき呆れ顔で見つめる。


「あのねぇ・・・それが作戦といえる代物なの!?全く・・・


 まあ、どうかと聞かれたら非の打ち所しかない作戦としか言えないわね


 ていうか単なるツッコミ待ちだったの!?」


「うっ、違うけどさ・・・じゃあどうしたらいいと思うのよよ?」


一旦目を閉じたソフィアは再び大きく目を開け口を開いた。


「まずは前方の大型魔獣の先鋒を蹴散らす、あいつらは基本的に本能で戦うから


 まず一撃を食らわせてやれば怯んで一旦、足が止まるはず、その隙に後方に


 引き返し魔族の頭の潰す‼︎」



〈ふ~ん〉と言いながら作戦を聞いていたリナ。


「でも私達が前方の大型魔獣を攻撃している時


 後方にいる魔族達に襲撃されたらどうするの?」


「それはおそらく大丈夫よ、今回私達が前方と後方の敵に挟撃されているってことは


 私達がウレスコル原野を抜けるまで、後方の魔族達は別のところで


 息をひそめて隠れていたということだからね、つまり司令官がいるはず


 元々魔族は狡猾だから我等の前衛が魔獣族にやられて隊列を維持できなくなってから


 総攻撃を仕掛ける作戦だと思う、だから前方の魔獣達に一撃を食らわせて


 くさびを打ち込み、奴らが戸惑っている内に踵を返して後方に戻り


 魔族の司令官を狙って倒す、頭を失った魔族は混乱するはずだから


 その隙に一気に後方の魔族を掃討して、後はゆっくり


 残りの大型魔獣を狩りつくすって段取りよ」


作戦を話しているソフィアも聞いているリナもどことなく嬉しそうである


ニコニコしながら魔獣の大軍に近づいて行く、それはまるでショッピングにでも


行くかのような雰囲気すら感じられた、そんな二人を見てアイゼナッハが思わず叫んだ。


「危ない、白等級の君たちが手に負える相手じゃない、早く戻って来い!!」


その声に呼応するかのように他の者達も次々と呼びかける


「ホワイトの出る幕じゃない早く帰って来い!!」


「そうよ、早く逃げなさい、死にたくはないでしょ!?」


仲間の必死の呼びかけにも全く動じることなく歩みを進めていく二人


「ねえリナ、あんなこと言ってるけど、どうする?」


「う~ん、聞こえなかったことにすればいいんじゃないソフィア」


ソフィアはその答えに呆れたような表情で目を閉じ首を振る


「聞こえなかったって・・・あんた確か耳も異常に鍛えているでしょ!?


 普通の人にも聞こえるあんな大声が聞こえないわけないじゃない」


それを聞いたリナは少しムッととした表情で言い返す


「あんただってその耳に着けてるでっかいイヤリングは聴力強化のアイテムでしょ


 聞こえないとは言わせないよ」


言い返され少し困ったような顔を見せたソフィアだったが


大きくため息をつき開き直ったように話し始めた。


「まぁ言い訳は後から考えましょうか」


「その考え方、嫌いじゃないよ相棒」


二人は顔を見合わせニコリと笑うと大型魔族の群れに向かって歩いて行く


すると大型魔族の先鋒が二人に向かって猛スピードで迫ってきた、体長8m程で四足歩行の


その魔獣はその巨体を左右に激しく揺らしながら巨体に似合わない速度で近づいてくると


二人の目の前で大きくジャンプした、その大く開けた口と鋭い牙は


二人の喉笛に噛みつき一気に捕食する為のモノである、その光景を見て思わず目を伏せる冒険者達、その時


「ソフィア‼︎」


「あいよ‼︎」


リナが剣に手をかけ、鞘からスラリと引き抜き構えるとその剣の刃に強化魔法を付与する


次の瞬間リナの持つ剣が赤く光り横薙ぎ一閃、襲い掛かる魔獣を一刀のもとに斬り捨てた


「ギャアアアァァァーーー!!」


急激に動きを止めた魔獣は断末魔と共に首の無くなった胴体と共に力無く崩れ落ちた


そしてその巨大な首が地面にボトリと落下し切断面からは大量の血しぶきが


噴水の様に吹き出し、周りを真っ赤に染めていく、跳ね飛ばされた首は


地面にバウンドする様に落下すると、その大きく開けた口から長い舌が出ており


生気を失ったその目はもはや獲物を見ることもなかった。


首のなくなった胴体部分はまだピクピクと痙攣していたが、そんなことを気にする様子もなく


リナは自分の剣を見てため息交じりに肩を落とす。


「もう刃こぼれしてるじゃないのこの剣・・・


 基本技と少しの強化魔法でこの体たらく・・・


 もうあと一撃持つかどうかってレベルね・・・もういいわ」


そう言って手にしていた剣をポイっと投げ捨てると腰に下げていたもう一つの剣に手をかけた


ニヤリと笑いながらゆっくりと腰の刀を鞘から引き抜くリナ、その刀の刃の部分は漆黒


まるで闇を具現化した様なその姿はどこまでも黒く、禍々しいまでの雰囲気をまとっていた


鞘から引き抜いた途端、その怪しげで邪悪なオーラを遠慮なく撒き散らす漆黒の剣【黒龍丸】



伝説の暗黒龍の牙から研ぎ出したといわれるその剣の姿に思わず魔獣たちも怯むほどで


それを見て本能的に〈危険〉と感じた魔獣達は今度は一斉に襲い掛かってきた


砂煙を上げて複数の魔獣が迫ってくる、ドタドタと地鳴りのような足音を立て


一直線にリナだけを目指し猛然と突撃してくる魔獣達、その目は獲物を捕食するモノではなく


明らかに敵を倒す為の殺気に満ちた視線を向けていた、しかしそんな魔獣達とは裏腹に


思わず口元が緩むリナ、そして剣を顔の右横で構える、いわいる八相の構えである


「龍眼上陰流 臨の型、五月雨 」


リナの持つ剣が魔獣達に向かって振り下ろされた


もはや常人には見えない速度で刀が何度も宙を斬り裂く


するとリナの目の前で次々と切り裂かれていく魔獣達


ほんの数秒前まで恐ろしい姿で襲い掛かってきた魔獣達がどんどん肉塊へと


変わっていき、大地に次々と転がっていく


血しぶきで前が見えなくなるほど宙が真っ赤に染まり


凶悪で獰猛だったはずの魔獣達の死骸がバタバタと地面に落ちていく


それでも怯むことなく次々と襲い掛かる魔獣達、恐怖と憎悪をたぎらせながら


目の前の小柄な少女を殺害せしめんと猛然と襲い掛かっていく


しかしそれは無駄な抵抗にすら見えた、まるで小型の竜巻の様に魔獣達を


蹴散らしていくリナ、魔獣達がその竜巻に突っ込んでいく様は


まるで自殺志願者が殉教者の様であり、文字通り血の雨が降り注いだ


そうしてリナの目の前に大量の屍が積み上げられていく


あまりの一方的な展開にさすがの魔獣達も突撃の足が止まった、その時リナの目が鋭く光る


すかさず体を半身に構え剣先を後ろに下げた、俗にいう脇構えである


「ソフィア‼︎」


「わかってるわよ‼︎」


その返事と共に重心を低く身構えるリナ、目の前の魔獣達を鋭い眼差しでジッと見つめる


それに合わせ様にソフィアが両手を高々と上げた。


「龍眼上陰流 烈の型 渦潮 」


リナの持つ漆黒の剣 【黒龍丸】に邪悪なオーラが集まり始める、ソフィアが両手を振り下ろすと


黒龍丸の周りに凄まじい勢いで回転する旋風がまとわりついた


刀身を中心に風が渦潮の様に高速回転しどんどん大きくなっていった


「行くわよ、とおおりゃああぁぁぁーー‼︎」


リナが黒龍丸を勢いよく振り切ると刀を取り巻いていた旋風が放たれ巨大な風の刃となって


魔獣達を飲み込み切り裂いていく、高速で回転しながら移動する狂暴凶悪な竜巻は


次々と魔獣を蹂躙して行った、強靭な体を持っているはずの魔獣達が何の抵抗も


できないまま、為す術もなく飲み込まれ肉片へと変えられていった


そんな一方的な虐殺とも言える光景を信じられないといった表情で見ていた


アイゼナッハは思わずつぶやく。


「な、なんだ今のは・・・剣への強化魔法とかいうレベルじゃない


 剣と魔法の融合技!?可能なのかそんな事が!?


 それに今使った技は【龍眼上陰流】じゃないのか!?」


驚愕の表情を見せていたのはアイゼナッハだけではなかった、隣にいた


金等級の魔法使いサンドラが信じられないといった表情を浮かべ首を振る。


「何よ今のは、剣に風魔法を乗せて威力を増幅させた!?そんな事って・・・


 しかもあの魔法は【烈風斬牙”】B級魔法だけどあれほどの回転数と効果範囲の広さは


 今まで見たことないわよ・・・白等級の彼女が何で!?」


驚きを隠せないアイゼナッハとサンドラを尻目に二人は警戒の為


辺りを見回しながら視線を合わせることなくお互いの右拳を軽くぶつけ合う


魔獣達は先鋒隊が壊滅状態になった事で大混乱を起こしており、後退を余儀なくされていた


「これでしばらく時間が稼げそうね、じゃあ次は後方の魔族ね


 ボサッとしてないで行くよソフィア‼︎」


「ボサッとなんかしていないし、一々指図しないでよ


 私がアンタの手下みたいじゃない‼︎」


「いいねそれ、一度私の子分になってみる?」


「冗談止めてよ、誰がアンタの子分になんか・・・アンタが私の子分になりたいって


 言うのなら考えてやってもいいわ」


「ねえソフィア、今回のお弁当の件で私に借り一つある事忘れてないわよね?」


しばらく無言のソフィアだったが急に目つきが厳しくなり返事をすることなく走り始めた。


「行くわよリナ、魔獣達が体勢を立て直す前に後方の魔族達を蹴散らす‼︎」


全力で駆けていく相棒の背中を見てリナは少し呆れ顔を見せた。


「アンタ・・・私への借りを踏み倒す気満々でしょ・・・」


ソフィの後を追う形でリナも駆け出す、そんな二人を見て思わず付いていく


アイゼナッハとサンドラ、後方の魔族達が気になるのはもちろんだが


この二人の事が気になってしょうがないのだ


二人の背中を追いかけながらアイゼナッハは考えていた。


『何なんだこの二人は、白等級だろ?なぜあれほどの力が使える・・・


 しかもあのリナという子が使っていた技、あれは間違いなく【龍眼上陰流】だ


  【剣聖】ベルドランが極めし最強の剣技、そんな技をどうしてあんな若い女が!?


 それにまさかとは思うがあの漆黒の剣は・・・』


あっという間に後方の魔族達がいるところまでたどり着いた四人


しかし目の前の光景に愕然とするアイゼナッハとサンドラ


無数の魔族が空中にいることは理解していたが自分達の目の前に


立ち塞がる異形の魔族達を見て愕然とする、その先頭には体長2mを超え


筋肉質の黒い体に顔面だけ骸骨という魔族が数十体いた


しかもそれらは両手に大きな剣と盾を持ち


身に着けている鎧はうっすらと光を帯びていた


「あ、あれは悪魔騎士、準A級モンスターじゃないか、それが30体以上いるぞ!?」


「嘘でしょ、ただでさえ悪魔騎士には魔法が利きにくいのに魔法耐性の鎧まで


 装備してるなんて・・・あんなのどうやって倒すのよ!?」


絶望的な状況に愕然とするアイゼナッハとサンドラ


すると空中にいた魔族の隊長と思しき一体が


ケケケケ~と笑いながら語りかけてきた。


「脆弱な人間どもめ、我が魔族の圧倒的な力の前に絶望するがいいわ、死ね死ね死ね死ね


 苦痛と絶望の中で息絶えろ、人間の苦しみと絶望こそ我等魔族にとって最良のご馳走よ」


空中から四人を見下ろし高らかに笑う魔族の隊長、既に勝ちを確信している様子で


いたぶりながらどうやって殺してやろうか!?とばかりに


今後の展開を想像しながら愉悦に浸っているようである


その言葉を受け、上空を見つめながら歯ぎしりするアイゼナッハとサンドラ


そんな時ソフィアがボソリとつぶやくように口を開いた。


「魔族風情が何言ってるのよ・・・」


そして右手を高々と上げると手のひらから強烈な光が放たれた


「さっさと消えなさい、目障りよ 【聖唱浄歌】‼︎」


すると次の瞬間、悪魔騎士の頭上から光の粒子が雪の様に舞い降りてきた


その光はキラキラと煌めきながらゆっくりと降り注いでいく


その不思議な光の粒は激しい戦いを一瞬忘れさせるほど幻想的で


美しく、まるで見ている者達を別世界へと誘うようですらあった


そんな光の粒を全身に浴びた悪魔騎士は瞬時に体が灰となり空中へと霧散していく


身に着けていた主人を失った武器と鎧は引力に逆らう事なくそのまま地面に落下し


光が完全に消えた頃には悪魔騎士の姿はどこにもなかった


そんな光景を見せつけられて大きく口を開け言葉の出ないアイゼナッハ


サンドラも驚愕の表情を浮かべながら瞬きもせず目の前の光景を凝視する。


「何で?今の【聖唱浄歌】は神聖属性のA級国家指定魔法じゃないの!?


 本来ゴールドクラスでもほとんど使える者がいない難解な魔法のはず


 そもそもホワイトが使えるような魔法じゃないわよ


 それに魔法耐性の鎧を付けた悪魔騎士を一撃って!?」


驚いていたのはアイゼナッハとサンドラだけではなかった、空中にいる魔族の隊長も


自軍の切り札ともいえる悪魔騎士達が一瞬でが全滅したという驚愕の事実に困惑していた。


「馬鹿な・・・悪魔騎士が一撃だと!?それにあいつらは魔法耐性の鎧も身に着けて


 いたんだ、たった一発の魔法でやられるはずが無い、何かの間違いなのではないのか!?」


あまりに想定外の事態を受け入れられない魔族の隊長


その言葉を聞いて思わずクスリと笑った。


「あんなちゃっちい鎧で私の魔法を防げるとでも思ったの?


 だから魔族はお馬鹿さんなのよ」


呆然とする魔族とアイゼナッハ達を尻目にリナがソフィアに近づくと小声で問いかけた


「魔族の司令官はどこにいる?」


「少し待って、今から探すから・・・」


ソフィアは目を閉じると、そのまま身をかがめる様に片膝を地に付けて右手を地面に当てた


するとそこから光の波紋が発生し放射線状に広がり一気に大地を駆け抜けていく


静かに目を開けリナの方を向くとニコリと笑って告げた。


「敵の位置が判明したわ、魔族の司令官がいるのは10時の方向、距離約3kmの地点よ」


「OK、相変わらず魔力ソナーの探知能力は凄いね、じゃあ


 いつものヤツでいきますか!?」


リナとソフィアは顔を見合わせ軽く頷くと、楽しそうに微笑んだ。



ようやくバトル突入と相成りました、随分と遠回りした感じですがご了承ください、この物語は二人の掛け合いがメインと考えていますのでこれからもそれが中心で進んでいくと思います、長い目で見ていただけると嬉しいです、では。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ