第4話 紹
ここで刀の名前が明かされます。
何故この名前なのかは作者の自身にも分かりませんw
っていうか結末がまだ確定してませんw
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
「危ねえなァ」
ハアハアと肩で息をしながら、与兵衛は言った。おっ父はそれを見て、「はっはっは」と声を上げた。
「それだけ殺気を放つ刀を、よく抑え込んだな。成長したなあ、与兵衛」
おっ父の方を、与兵衛は振り向いた。月の逆光で、おっ父の顔がよく見えない。
「日頃のおっ父の特訓のおかげや」
与兵衛もちょっと笑って、そう言った。
刀に付いた血を木で拭うように、ぎりぎりと何度も斬りつける。与兵衛はそうしながら、刀は何も言わんなあ、と思っていた。
と思ったら、声がした。
「てめえ、与兵衛と言ったな?」
「ああ、せやけど?」
刀に話しかけられるという奇妙な経験をしているにもかかわらず、何故か順応している自分がいた。
「しばらく、てめえの元で過ごしてやらあ」
「何?」
「だから、てめえんとこで過ごすって言ってんだよ! 俺を引き取れ!!」
この刀を引き取る……。おれが……?
「与兵衛、どうした?」
木に斬りつける動作が止まったまま固まっている与兵衛に、おっ父が声をかけた。
「おっ父、こいつ、しばらく、おれの元で過ごすって言うてる……」
「ああ、そうか」
おっ父は、何でもないことのようにそう言った。
「そうしなさい。それでそいつがおさまるのならな」
それまで黙って聞いていた、刀が叫んだ。
「『そいつ』じゃねえ!!」
「え?」
与兵衛は訊き返した。
「俺のことは『ゲン様』とでも呼ぶがいい!!」
「ゲン様?」
名前までこの刀には付いているのか、と与兵衛は驚いた。さぞ立派な刀なのだろう。刀の言動は乱暴極まりないが。
「よろしくな、ゲン、様」
与兵衛の挨拶に、まだ血まみれの刀は、何も言わなかった。