第14話 戻
ゲン様、今回何もしゃべってないですね。
実は、ゲン様が「てめえ」でべらんめえ口調なのは、書き始めた当初はなかった設定でした。
設定というより、作者が書いていて、誰が誰だか分からなくなったため、
このような乱暴な口調になりました。
今は立派に(?)キャラとして立っていますが、そんな感じです。
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
与兵衛たちは、空が白んできたころに、ようやく天龍寺へと戻った。妹やおっ母を起こさないよう、そうっと扉を開けて2人は入り、そうっと静かに閉めた。
土間で、2人並んで草鞋を脱いだ。
与兵衛はほうっとため息を漏らした。
「おっ父」
「何だ?」
「さっきの話やけど…」
「ああ、隠し事、か」
「せや」
「すまんな」
おっ父はまた急に寂しそうな笑顔になって、ぽんぽん、と右手で与兵衛の頭に触れた。
与兵衛の坊主頭から手が離れたかと思うと、今度はその手で自分の坊主頭を掻きだした。
「ううむ……」
「何?」
「いや、何から話すべきか、と思ってな」
そう言っておっ父は、天井を仰いだ。
「長いんやな? 話」
「うむ、長い」
「何でもええよ?」
「信じられない、というような話もするかもしれないぞ」
「うん」
そこで、また2人は黙り込んだ。
しばらくそうしていて、与兵衛はおっ父が話し出すのを待っていた。刀も、何も言わない。
不意に、おっ父が言った。
「……だめだな」
「だめって何が?」
「おっ父の頭の中が、ぐるぐるしている。何から話すか、整理するから時間を少しもらえるか?」
「ええけど?」
「とりあえず今夜、というよりももう朝方だが。疲れたろう? おっ父は久々に疲れたぞ」
「うん。おれも走りすぎて疲れたわ」
おっ父は立って、手ぬぐいを腰から抜いて、与兵衛に差し出した。
「与兵衛。ゲン様とか言う刀を、後でこれを使って拭いてやれ。血のりが付きっぱなしだからな。それからまず寝ろ。私も寝る。風呂は遅すぎるからなしだ。」
「分かった、おっ父」
与兵衛は、手ぬぐいを受け取った。
「明日、話ができるようにする」
「うん」