第11話 問
今年もよろしくお願いします。
書けるときは書いていきます。マイペースで。
与兵衛はまだまだ子供だな、とゲン様と共に思った回です。
いつもありがとうございます、よろしくお願いします。
「ゲン様の殺気が、無くなったぞ」
そう言って、おっ父が刀をしまって決闘のようなものは取りやめとなった。
おっ父と闘わずに済んでよかった、と、とりあえず与兵衛はほっとしていた。
「与兵衛、お前が前を歩きなさい」
落ち着きを取り戻したようなおっ父にそう言われて、与兵衛はまた、歩き出した。自分たちの家である寺に向かって。
走って走って、いつの間にか隣町の入り口付近まで来てしまっていた。歩いて帰ったら、夜明け近くになるかもしれん、と与兵衛は思った。
夜が遅すぎて、辺りには誰も居なかった。それが安心でもあり、ちょっと不安でもあった。どこか遠くで犬の遠吠えがした。
与兵衛は、おっ父に声をかける代わりに、刀に声をかけた。
「なあゲン様」
「何だ?」
「ゲン様は、さっきお小夜がどうとか言うとったな?」
刀はしばらく何も言わなかった。
与兵衛は痺れを切らしたように刀に言った。
「お小夜って誰なん? なんか言ってくれや」
刀が口を開いた。
「なあ与兵衛」
「何や?」
刀は問う。
「てめえ、好きな女はいるか?」
「お千代やおっ母は大好きやで」
それを素直に与兵衛が言ったら、刀は「けっ」と笑った。
「違う、そうじゃねえ。てめえ、まだまだガキだな」
「おれ、まだ齢十二のガキや。ガキで何が悪いん?」
刀に馬鹿にされたんやな、と与兵衛は感じ、ちょっとふくれっ面になった。