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0.Prologue
例えば 現と夢の間に、道と扉があるとして
――何処にでもあり、何処にも莫いと謂われる空間にて
「そこ」は暗闇があたりを支配していた。
ねっとりとした闇の中、その闇を押しのける輝くものがあった。
それは緑色に輝き、宝石のエメラルドを彷彿とさせる。よく見ればその正体は髪だった。その髪を所有する者は小柄な少女。流したままの髪は少女の歩調に合わせて揺れている。
目印になりそうなものなど何も無い深淵の闇の中を、少女は迷いなく進んで行く。
しかし、少女は唐突に歩みを止めた。しばらく佇み、ややして諦めたように溜息を吐いた。
そして、一言。
「あんのドアホがっ…ルール違反だわ、とっ捕まえてやる」
ドスの効いた声が、可憐な唇から……。