先祖返りの村
「ここが井戸か…」
ヒヨウが呟いた。
村は、石垣で固められた丘の上に作られていたので、入り口は三つしかなかった。
村の規模を考えると立派過ぎる門が村を護っていたが、湖側の門はプルートゥに破壊され、周囲は焦土と化している。
井戸があったのは、そこから一段上がった中心部で、そこに直結した裏門からヒヨウたちは村に上がってきた。
周囲は、まだ盛んに炎が上がってはいたが、木造の家屋はほぼ焼けており、自然鎮火も近そうだ。
井戸は、立派な石組の丸い竪穴だった。
「結構深そうだねー」
チェコは身を乗り出して、中を覗いた。
背中には、気絶したままのタッカーを背負っているので、かなり危なっかしい。
とはいえ、タッカーには、まだ聞かなければならない事も多いので、そのままゴロタの森に放置するわけにもいかない。
「中に降りてみようか?」
「まず、パトスのカードで、捜索を試してみよう。
どのみち、タッカーを背負ったままで井戸に降りるわけにはいかない。
少し休め」
でも…! と、チェコは言うが、ヒヨウは木の葉の包みをチェコに放った。
「食べろ。
丸一日、歩き回って、それで次にプルートゥに会ったらどうする気だ。
次は、この村人の様に殺しにくるかもしれないんだぞ!」
チェコは、どすん、と座った。
「そうだよねぇ。
俺、よく殺されなかったよねぇ…」
「おそらくミカの前だったから、だろう。
状況的に、放っておいても動けなくなって死ぬだろう、と思われたのもあるだろうがな」
「ああ。
ミカさんが、チサちゃんを俺に付けてくれたおかげか…」
チェコがちさの頭を指でくすぐると、
「ミ、カ、、チ、ェ、コ、、、が、好き…」
キシシ、とちさは、どうやら笑ったようだ。




