96/688
道
村は、完全に火が回っていた。
チェコたちが見ている前で、大きな家屋が、ぐしゃりと燃え潰れた。
村の周囲には畑があったためと、村全体は岡に作られていて、周囲を堅牢に石垣で囲っていたため、何とか森に延焼するのは避けられそうだったが…。
「ヒヨウ…。
これって…?」
「ああ」
ヒヨウは、炎に照らされた顔で頷いた。
「こんな真夜中に火を使っていたとは思えない。
間違いなくプルートゥの仕業だろうな」
チェコは火を見つめていたが…、急に、ええっ! と驚いた。
「もしかして、キャサリーンねぇちゃんたち、この村にいた、ってこと?」
ヒヨウは目を細め。
「捜索では、そう出ていた」
呟き、少し周りを歩いてみよう、と提案した。
そう広くない村の周囲を回ってみると、真っ黒こげに焼かれた、頭の異様に大きい人間の死体と、背が極端に低い人間の死体があった。
二人とも、槍を手にしていた。
死体の先には、微かではあるが、道の痕跡のようなものがあった。
「先に行ってみよう!」
ヒヨウは剣を引き抜き、走り出した。




