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臭い
今までの傾斜地と比べれば、遥かになだらかな森を進んでいくと、気の早い鳥が、どこか遠くで鳴き始めた。
そろそろ朝も近いようだ。
初めに、ちさが呟きだした。
「チ、ェコ、、、何か、、、変、な、臭い、、、す、る、、、」
えー、とチェコは、クンクンと、顔をあちこちに向け、臭いを嗅いでいたが。
「うーん、確かに東の方から臭いがするんだけど、何の臭いなのかまでは判らないなぁ…」
その時点では、誰も臭いの種類までは判らなかったが。
徐々に一行の足は速まっていく。
「チェコ、判るか?」
その頃には、チェコにも判っていた。
「火事だよ…。
リコの村でも、前に火事があったから判る…」
チェコもヒヨウも走っていた。
やがて、闇に沈んでいた森の端に炎が見え始め、三人は用心して足を遅めた。
「これって…、もしかすると先祖返りの村…?」
「らしいな…」
ヒヨウが答える。




