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暗闇
「チェコ。
アースを浮かべておけ…」
ヒヨウが喘ぐように言った。
チェコは、雷を使うのかと思ったが、違っていた。
「さっき二つ頭を使ったな。
もしドゥーガが翼をたたんだら、その瞬間に二つ頭を唱えるんだ!」
「二つ頭?
雷じゃないの?」
「ドゥーガが急降下してくるスピードは、矢よりも早い。
雷などは当たらない。
二つ頭で逃げ切るより他はない」
そんなに凄いのか?
ぼんやりと思いながら、チェコは巨大な翼を見上げたが。
「来るぞ!」
ヒヨウが叫んでから、ドゥーガが翼をたたんで丸くなったことに気付いた。
「二つ頭!」
チェコの横に生えていた木が、一瞬で、小枝のように根元から折れた。
ドゥーガは、クマのような巨体だった。
はるか上空にいたため、もっと小さいのかと勘違いしていたのだ。
視界が真っ黒に塞がった。
ドゥ。
と、爆音のような羽音と共に、ドゥーガは羽ばたき、上空に跳んだ。
なんとか、チェコは助かった。




