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夜の鳥
チェコとヒヨウは、つづら折りの坂を駆け下りていく。
カーブでは、僅かに生えた木や、雑草に掴まるようにして、スピードを落とさないように疾走した。
ひらけた傾斜地なので、上空がよく見えた。
星は相変わらず透明に輝き続け、巨大な鳥の姿などは見えなかった。
バサ…。
羽ばたきが聞こえた。
え…。
「来たぞ、注意しろ!」
どこから現れたのか、全く分からなかった。
気が付くと、星明りをバックに、漆黒の巨大な翼が、悠然と羽ばたいていた。
ドゥーガは、まるで二人になど興味は無い、と言うように、ゆったりと空を飛んでいる。
それは巨大な羽根だけの生き物のようで、首や、尾というものが見当たらなかった。
左右の翅と胴体だけが夜空に踊っている。
だがドゥーガは、チェコたちを一瞬で襲える距離から外れることは無いようだ。
バサッ!
あっ、とチェコが頭上を見上げた時…。
二羽目のドゥーガが、上空に現れていた。




