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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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好奇心

そうか…。

と、ヒヨウは、感嘆して言った。


「旅とは、旅団と同道してするものなのか」


チェコは、ああ、違うよ! と慌てて。


「もちろん、普通に街道を乗合馬車で行ってもいいんだけど、それじゃあ、色々な町は通り過ぎるだけじゃない。

旅団と旅をすれば、世界のいろいろ、砂漠や、靴ほどの幅も無い岸壁沿いの道や、海のような湖や、世界の全てを知って、見ることが出来るんだよ!


アルタァードでは塩で出来た山がある。


モゥコでは火が噴き出ている池がある。


西の砂漠を越えた先には、石をくり抜いて作り上げられた街があるんだ。

古代の遺跡だって世界には沢山あるし、遺跡に潜る仕事をしている人たちだっているんだよ」


ヒヨウも、遺跡掘りのことは聞いたことがあった。

見たことも無いようなモンスターと、日々戦っているらしい。


「さぞ、壮絶な仕事だろうな」


「俺、だからスペルランカーにもなりたいけど、スペルランカーで金を稼いだら、旅団と同道して世界を回りたいんだ。

ラドムじゅうの珍しいことをみんな見て回るんだ!」


ヒヨウは笑った。


チェコの頭は、底が抜けている…。


普通は皆、この世界の中で、上に立ちたい、とか、富を得たい、とか、世界という枠の中で何をしたいのか、考えるものだろう。

だがチェコは、世界の外に出たいのだという。


ヒヨウも異郷の話は聞いたこともあったが、自ら赴こうとは思わなかった。


世界はそれだけ広すぎるからだ。

世界の一部分にすぎないヴァルタブァ王国の首都コクライノに行くだけでも、馬車で一週間かかるのだという。その西に広がる砂漠だけで、ヴァルタブァ王国の何倍もの広さがあるのだという。


当たり前だ。

なにしろ、古井戸の森から、この山に来るだけでも一昼夜かかるのだ。


旅で体を悪くするものも多い。

エルフもヴァルタブァの各地に仕事を持つが、旅からは帰らぬものも数多い。


旅とは、それだけ過酷なものなのだ。

味方も誰一人いない異郷で、仮に病気や怪我にでもなったら、どうすればいいのか?


だが、チェコはそんなことはまるで考えていない。


ただ、巨大な、巨大な、好奇心があるだけだ。


ヒヨウは、腹の底から笑っていた。

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