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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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交易

「いいかチェコ。

ここから虹カマスの湖までは、かなりの距離がある。

ちょっとキツイ道を通るぞ」


「うん。

平気平気」


チェコは軽く答えた。


エルフでも普通は避ける道だぞ、と念を押そうかと思ったが、ヒヨウは黙った。

どうせ、しばらくチェコと同道するのなら、彼の実力も知った方がいい。


ヒヨウは、しっかり背についてくるように言って、歩き出した。


のっけから急斜面を長く下り続けるルートだ。

木の根や岩なども、あちこちに突き出していて、上級者でも夜間に通ることは無い。


それでも安全なルートを選んでヒヨウは歩くが、チェコは意外にも付いて来ている。


しばらく下り続けると、さすがに息遣いは荒くなってきたが、ペースが落ちることは無かった。


「お前、山を歩きなれているな?」


「…まぁ…、ダリア爺さんは人使いが荒いし、貧乏だからね。

山なら、ただで食べ物も手に入るわけさ…」


普通の村人、という訳でもないらしい。


「しかし、このぐらい山を歩けるなら、なにも古井戸の森に召喚獣を採りに来なくてもよかったんじゃないのか?」


ハハハ、とチェコは笑う。


「普通はゴロタの森になんて入らないよ。

夜の森も初めてさ。


あーあ、チャンスがあれば、あの猿喰い猿はトレースしたかったなぁ…」


あいつは無理だ、とヒヨウは教え、


「しかし、夜歩きも初めてには見えないぞ」


ああ、とチェコは頷き、


「草原は夜、よく歩いたよ。

寝たふりをして、家を抜け出してパトスと二人で…。


トカゲ人間の旅団のキャンプが、唯一、俺がスペルカードを買える場所だったからね」


ほぅ、とヒヨウは唸る。


草原のトカゲ人間の話は聞くが、実際に自分の目で見た、という人間とは初めて出会った。


「トカゲ人間は恐ろしいか?」


アハハ、とチェコは笑う。


「旅団の人は平気。

元々交易のために旅をしてるんだから、別に見境なく襲ったり、脅したりしないよ。

最初に行ったのはグレン兄ちゃんと一緒だったから、優しかったよトカゲ人間。

尻尾に乗せてブランコしてくれた。


体は大きいけどね。

みんな、二メートルぐらいはあるし、尻尾が大きいから、横幅も凄いんだ。


アッハーの北旅団って言って、毎日、十日にリコの村からガイハ岩山を越えた先にキャンプを張るんだよ。

草原は、昼は暑いから、夕方から夜にかけて、キャンプを訪れた人間相手に交易するの。


お金でもいいし、山の薬草とか、キノコなんかは、彼らには珍しいから、良い交易商品なんだよ」

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