捜索
ヒヨウは、カードファイルを目の前に置き、自分は胡坐をかいて座って、スペル捜索を発動させた。
ヒヨウの頭の中で、意識が飛翔を始め、暗い森を抜けて、星空を飛び、やがてーーー。
「判ったぞ。
どうやらゴロタの森にいるらしい。
湖の近くだ」
軽い瞑想状態から現実に戻り、眠気を覚ますように目を擦りながら、ヒヨウは言った。
「それでそうするんだ?
このまま危険な夜の森を進むのか、それとも朝を待つか?」
チェコは俯いた。
「俺は先を急ぐよ。
きっとプルートゥの奴は、三人を探しているはずだ。
出来れば、先にキャサリーンねぇちゃんやパトスと合流したいんだ。
それに、朝になったらゴロタが目を覚ますだろ。
今のうちの方が、ちょっとだけ安全さ」
言ってヒヨウを見た。
「ヒヨウは?
何か、用があって森にいたんでしょ?」
いつか問われると思っていた。
長老からチェコの監視と身辺警護を申し付かっている、とは言えない。
「ああ。
俺の用は、実はもう終わってるんだ。
エルフは、けっこう縁起を担ぐんでな。物を捨てに、夜の森に入って、もう、捨ててしまったから、後は散歩のようなものだ。
ゴロタの森で知り合いを独り歩きさせるわけにもいかない、付き合ってやる」
チェコは、目を輝かせた。
「ヒヨウ!
ありがとう!
君って、本当に良い人なんだなぁ!」
ささやかな棘が、ヒヨウの胸で、疼いていた。




