初撃
「武器かぁ。
幾らぐらいするのかなぁ。
俺、持っているのは、このナイフぐらいなんだ…」
チェコは古井戸の森で拾ったナイフを見せた。
「ん、これはナイフというより短剣だな。
これでも十分だろう。
本格的に剣の技術を身に着けるのは、後で構わないのだからな」
ヒヨウは、チェコの短剣を確かめ、チェコに返した。
「「いいか、チェコ。
スペルランカーならば、今のような戦いはいくらでも経験するだろう。
プロのスペルランカーと相手が知れば、公式戦では無いのだから、十秒待って戦う、等というバカは誰もしない。
さっきのプルートゥとの戦いだって、お前が敵の初撃を受け止めていれば、全く違う戦いになっていたんだ。
スペルランカーなのだから、攻撃はスペルを使えばいいし、初撃を受ければ召喚獣だって呼べる。
だから、その短剣で初撃を受け止められるよう練習するんだ」
チェコは自分の短剣を見た。
闇の中でも、微かな光りを拾ってか、瞬間、キラリ、と光ったようだ。
「判ったよ!
俺、練習する!」
チェコは剣を振り始めた。
「それにしても、猟師小屋に行く意味は無くなったようだな。
どうするんだ?」
ヒヨウの問いに、チェコは首を傾ける。
「うーん、キャサリーンねぇちゃんとパトスを探したいんだけど、この広い森でテレボを使われちゃうとなー。
どうしたもんか?」
「そのキャサリーンさんか、パトスに、トレースはかけていないのか?」
ああっ! とチェコは頭を抱える。
「トレースしておけばよかったよぅ…。
忘れてた…」
「召喚カードがあれば、俺の持っている捜索のスペルで、位置を割り出せたんだがなぁ。
せめて、持ち主の思念が籠っているような品でもあれば、探せないことも無いんだが…」
チェコは、うーん、と唸るが、ハッ、と気が付いた。
「そうだ!
タッカー兄ちゃんのカードファイルを持っているよ!」




