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猿喰い猿
闇の中、ヒヨウとチェコは必死に歩いた。
あれだけいた猿の群れは、もう、どこかに逃げ去ってしまったようだ。
「ヒヨウ。
俺、どのぐらい気絶していたの?」
「おそらく、五分か、十分ぐらいか…」
えー、とチェコは叫び、
「その後エクメルと話をして、鎧骸骨を倒して…。
二十分ぐらい、過ぎちゃったのかな!」
「そうだな。
たぶん、もう…」
ヒヨウが言葉を切った。
同時に足を止めたので、チェコはヒヨウの背中にぶつかりかけた。
慌てて避けた、前方に、それ、は立っていた。
猿…だ…?
いや…。
猿…、なのか?
その猿の身長は、チェコより少し低いぐらい。
そして、人間としてはあり得ない長い手には、左右、一匹づつ、ぶらん、と死んだ猿をぶら下げていた。
目が異様に光っている。
そして、猿喰い猿、は、無造作に片手を上げ、手にした猿の頭を、自分の顎で砕いた。
カリッ。
驚くほど軽い音がして、猿喰い猿は、猿の頭蓋を噛み砕き、中の物を、ゴクリ、と飲み込んだ。




