プルートゥ
キャサリーンねぇちゃん、また、テレポ使っちゃったんだ…」
チェコは、呆れて呟いた。
「あの女は、少しおかしいぜ。
こっちは、いたって紳士的にお願いしただけなんだがな」
ニィ、とプルートゥは、巨大な顎を逸らせて、笑った。
「だけど、おじさん。
俺、聞いただけなんだけど、妖精を殺そうとしてるって?」
プルートゥは笑顔で、
「俺は知らん話だ。
俺の仕事は、あくまで妖精の回収だけ、だしな」
と、穏やかに語った。
「え、でも、妖精殺し、だよ?」
チェコは驚いた。
後ろで、ミカが囁く。
「チェコ、プルートゥに逆らっちゃダメ。
この人は、怖い人なのよ…」
チェコは、その言葉に息を飲んだ。
「おじさん、まさか判っていて?」
プルートゥは笑顔を少しも崩さずに、聞いた。
「で?
どうする、坊主?」
チェコは、心底、驚いた…。
この人は、人殺しだ…。
と、彼の一言で、なぜか直感してしまったのだ。
プルートゥの目は、屠殺場で家畜を見る、屠殺者の目だった。
今も、プルートゥは、微かにも心を動かすことなく、チェコを冷静に眺めていた。
その視線は、微かに笑ってさえ、いた。
全身から、突然に汗が流れた。
心臓の音が聴こえていた。
どうする…。
どうする?
どう…、する…。
チェコは、アースを浮かべていた。
「駄目よ、チェコ!」
ミカは叫ぶ。
が、チェコは計算していた。
なんとか、数ターンつないで、捕食が使える状況にさえなったら…。
もしかしたら、と…。
幸か不幸か、今は鎧骸骨の影響で、誰もが動きを制限されている。
だから、上手く戦えさえすれば…。
もしかしたら…。
だが、チェコがアースを浮かべた瞬間、プルートゥは走っていた。
いや、走る、などという、生易しい速度ではなかった。
十メートル以上はあった空間を飛び越え、プルートゥは、チェコの目の前に現れた。
「あ」
思う間もなく、チェコの顔面は、巨大な拳に押し潰されていた。




