最悪
ザッ、ザッ、と山刀で草を切り開きながら、ヒヨウは前進していく。
前から重かった脚は、前進するごとに重さを増していくようだ。
「く…。
きついな…。
鎧骸骨を見ないでも、こんなに体中が重たいとは。
だが、まだ歩ける…。
大丈夫だ。
よし…。
あと枯れ根まで五メートルだ。
まっすぐ進むぞ。
あと三メートル…」
ヒヨウの足が、一瞬、止まった。
「うっ、早速、遺骸を発見した。
最悪なことに足元だ。
だが、今さら、そんなことを気にかけても仕方がない、踏んで行くから気を付けろ。
よし…、やっと木の根に…。
なにっ!
しまった…、こ…れは、厄介だ…!」
ヒヨウの足は、驚きのためか、完全に停まっていた。
「なに?
どうしたんだ、ヒヨウ?」
チェコは叫んでいた。
ヒヨウは立ち尽くしている。
「く…。
駄目だ…。
もう、動けない…。
いいか、二人とも、よく聞いてくれ。
俺の正面の木の根のウロに、鎧骸骨がある。
だが、まずい事には、そこから右に二メートルほど進んだ先の岩の下に、二体目の鎧骸骨が…ある…。
く…そぅ…。
こ…こ…、までは…、考えな…かっ…た…。
岩の…、せいで、一人で同時に壊すのは…無理だ…。
…まず…、正面を壊し…、最後の一人が…、右の鎧骸骨を…壊す…んだ…」
ヒヨウの言葉が、そこで途切れた。




