接近
チェコとミカは目を瞑り、ヒヨウの背中に貼り付いて、ヒヨウの言葉に従って進んでいた。
ミカは囁いた。
「ねぇチェコ。
あたし、鎧骸骨の首を撥ねるの、嫌だな。
チェコがやってくれる?」
「ん、いいよ。
じゃあ、俺が三人目になる?」
目を瞑ったまま、チェコは最後尾に移った。
ヒヨウは自分の見たことを喋りながら進んでいく。
「酷い柘植の茂みだ。
山刀で切り開くから、少し止まっていてくれ」
ザッ、バサッ、と音が闇に響いていく。
「よし、二人とも棘が酷いから気を付けて通れ」
重い足を引きずって、じりじり、と進んでいく。
「足元が悪い。
大きな石がゴロゴロ落ちているから、横に避けるぞ」
ブーツの爪先で探りながら、チェコは歩いた。
「今のところは、肉食獣は感じないな。
まぁ、いずれにしろ鎧骸骨をどうにかしなければ、その先の事までは考えようもないが…。
見えた…。
先に大きな木の枯れ根がある。
たぶん、鎧骸骨はあそこにあるはずだ…。
あと、およそ、二十メートル、というところだな。
草を祓うぞ」
ばさっ、ばさっ、と草を薙いでいく。
「よし、ランプの前面にはシェードをかけて、これからギリギリまで接近する。
俺が動けなくなったら、後は頼むぞ…」
ランプは四枚の板ガラスを四角く組んである。
物にもよるが、シェードを下ろすことで、一方向の明かりを抑えられる構造のランプもあった。
前方の光りは遮って、ヒヨウはギリギリまで鎧骸骨に近づくつもりだ。




