鎧骸骨2
周囲は闇に包まれていたが、濃密な森林の気配が満ちていた。
歩くのは相変わらず草の道で、ヒヨウは、今は、手にした山刀でバサバサと灌木や草を薙ぎ払いながら、重い体をじりじりと進ませている。
「ねぇ、ヒヨウ。
鎧骸骨って、一目見たら動けなくなってしまうんじゃなかったっけ?」
ヒヨウの背中でチェコが問いかける。
「そうだ。
そして、死を待つだけの体になっていく」
ミカは叫んだ。
「じゃあ、駄目じゃん!
なんで逃げないのよ!」
ヒヨウは草を切り進みながら。
「一旦、この事態に遭遇してしまったら、もう逃げられないんだ…」
ひぇ~、とミカは悲鳴を上げた。
「でも、確か、朝を待つ、とか出来るんじゃないの?」
チェコが聞いた。
「朝になっちゃ遅いんだろ?」
「あ、そうか…」
チェコは頭を掻くが。
「残念ながら、そうでなくとも、背後には肉食獣が迫っている。
そう、のんびりしたこともできない」
ミカは囁く。
「あたしたち、死ぬために前進している、ってこと?」
ヒヨウは答えた。
「いや、違う。
俺たちは三人なんだ。
ここがミソだ。
俺が、鎧骸骨が見える場所まで、お前たちを連れて行く。
当然、俺は動けなくなるが、背中のお前たちに、俺の見えている全てを話す。
だから、お前たちは二人で鎧骸骨の首を撥ねるんだ。
そうすれば三人とも助かる。
判るな」
チェコとミカは、顔を見合わせた。
「な…、なるほど…。
首を撥ねる…、ね」
チェコは唸った。




