水の傍
キャサリーンは、命綱を付けたまま、何とか木から降りた。
下ではタッカーが、幹に背を持たれてゼーゼー言っていた。
キャサリーンも、ほとんど自力で木から降りる、と言う重労働の後だったので、土の上にへたばった。
「パトス君、ここがどこか、判るかしら?」
肩で息をしながら、聞く。
パトスはクンクンと空気を嗅ぎ。
「…水の近く…、たぶん虹カマスの湖…、の近く…の、ようだ…」
「はぁ、良かったわぁ。
もっとメチャクチャなところに出るかと思った」
「無茶ですよ、
こんな深山でテレポなんて…」
タッカーは弱々しく言う。
「仕方ないでしょ。
あいつは本当に、私たち全員を殺していたわよ」
「今の世の中、人を殺すスペルなんて無いですよ。
ライフを十削れば終わりです」
「タッカー君。
奴は禁止カードも使うのよ」
えっ、とタッカーは身を起こす。
「馬鹿な、禁止カードの売買なんて、重大な犯罪ですよ!」
「奴は軍人よ。
蛇の道は蛇、裏ルートを当たれば、禁止カードなんて、いくらでも入手できるのよ」
「そんな!」
叫ぶタッカーだったが、パトスが言う。
「静かにする…。
なにか、変な臭い…近づいて…くる」
「えっ、何、何。
ちょっと脅かさないで…」
キャサリーンは左右を見回す。
その瞬間、周囲の森の中から、人影が現れた。
キャサリーンは、無言で叫んでいた。
それは、人であって、人でない者たちだった。




