木の上
「テレポ!」
と叫んだキャサリーンの頭上に光りの点が現れ、キャサリーン、タッカー、パトスの三人は、光に吸い込まれた…。
そして…。
バキッ、ベキッ、ボキッ!
と、盛大に木の折れる音が耳元で響き、キャサリーンたちは、木の茂みの中を落ちて行った。
「あたたたた…」
タッカーの弱々しい呻き声が聞こえてくる。
「痛ーい…」
キャサリーンは、体中に引っかき傷を負って、木の葉の茂みの上で、ボワン、と大きく揺れて、止まった。
周囲は夕暮れ時で、鳥の鳴き声が賑やかだ。
「…はぁー、助かったのねぇー」
と、大きく息を吐くキャサリーンだったが…。
「キャ…サ…リ…ーン…、そこを…動…く…な」
パトスの声が聞こえた。
「ああ。
パトス君も無事だったのね!」
キャサリーンは、声のする方向に振り返ろうとするが。
途端に、枝が、グァン、と揺れた。
キャサリーンは、小さく悲鳴を上げ、
「え、ちょっと…、何、これ!」
「お前…、木の…枝の先…、引っかかってる…。
下…、落ちると危険。
ベルト…、ロープが…、ある。
こっち、投げろ…」
言われて、恐々と下を見てみると、地面は二十メートルほど下にあった。
ビクリ、と震えた途端、身体が上下に揺らめいた。
木の葉の中にいるので詳しくは判らないが、かなり枝の先端にいるらしい…。
キャサリーンは、自分のベルトを見た。
そう言えば、朝、チェコに借りたロープがぶら下げてあった。
「パトス君…。
どこにいるの?」
「お前…の…後ろ、一本…、上の枝」
言われて、ゆっくりと、首だけを回してみると、パトスの小さな顔が、木の葉から飛び出していた。
「そ…そう…。
ロープを投げればいいのね…」
キャサリーンは、そぉっと腰に手をやり、ロープを取った。
が…。
「パトス君。
このヘロヘロのロープを、どう投げればいいの?」
「片端を…自分に結び…、あとは、束のまま…、こっちに…投げ…る…」
キャサリーンは、自分自身に、…落ち着くのよ…、と呟きながら、腰にロープを巻き、そして…。
「パトス君、放るわよ…」
「冷静に…、投げろ…」
ロープは、塊のまま、パトスの方に飛んだ。
が、木の葉に当たって、ベチャリ、と崩れた。
同時に、投げた反動で、枝が大きく撓んだ。
「キャー!」
キャサリーンは、叫んだが、幸い、揺れただけで枝は折れはしなかった。
パトスは、仔犬サイズなので、難なく枝を歩き、ロープを咥え、木の幹にロープを回して、器用に縛った。
「命綱…、結んだ…、ゆっくり、こっち…、歩く…」
キャサリーンは、少し動くだけでブラブラ揺れる木の葉の上から、なんとか動こうと努力はするのだが…。
手や足をかける枝が細すぎた。
ちょっと力を入れると、ボキッ、と折れてしまうのだ。
それは、その分、キャサリーンを支える木の減少にも直結していた。
「…浮遊とか使っちゃダメかしら?」
「アース…、に…地雷虫…が集まる…」
「で…、でも…、枝がポキポキ折れちゃうのよ…」
キャサリーンは、半泣きだ。
「判った…。
俺…、引っ張る…」
パトスがズイ、と縄を引き、何とかキャサリーンは、力をかけられる太さの枝まで辿り着いた。




