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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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スペルランカー

ちょっと遅れがちにはなってます!


ここは力を入れて書きたいので、遅れがちですが、どうかご容赦下さい!

音が絶え間なくしているので、チェコは祈りに集中出来なかった。


長時間、ずっと祈り続けるのは辛い。

特に、チェコのように、何の教えも受けていない者には、頭の隅のカリカリと続く微音が、単調な祈りを塗り潰して行きそうだった。


タッカーは、一心に祈っていた。


そのようにチェコには見えた。


だが、よく見てみると、膝まづいた姿勢は、限界に近いようで、足をもじもじさせていた。


たぶん皆、疲れて来ているんだ…。


チェコも足は痛かったが、体重が軽いためか、そこまで辛くはない。


ただ、音が気になる…。


振り向いて、音の原因さえ判れば、たぶん我慢できる音になるはずだった。


何の音だか判らない、と言うのは、小さな音でも気持ちが悪い…。


音が気になり過ぎるので目を開き、周りを見ると、イガも脇腹が痒いのか、何とか肘で擦ろうとしていたが、さすがに肘では無理のようだった。


大人は、そうハッキリとは見せないが、皆、集中は切れかかっていた。


ミカさんも…。


必死に祈祷を続けていたが、汗が服の背中を濡らしている。


その前のゲームから、ミカさんは大変な思いをしてきたのだ。

疲れない訳が無い。


それでも必死にミカは詠唱を続けていた。


お…、俺も、小さな音ぐらいで祈りを止めちゃ駄目だ…。


チェコも考え直し、助けたまえ、救いたまえ、と祈りをやり直した。


タッカーが、ずっ、と膝をずらした。

無理な姿勢で祈るのを止め、地面に座ったらしい。


皆、だんだん集中力を再び取り戻し始めていた。


もう少しなのだ…。

最後の、ここは一番辛いところなのだ…。


山で言ったら何処だったろう?


後で考えると、あまり覚えていなかった。


ネルロプァの階段も辛かった。

あれは、三角に組まれていたので、どこで終わるのかがまるで判らなかったから、尚更辛かった。


赤竜山の岩の道は、片牙に追われていて恐ろしかった。


一人だったら、絶対に歩けなかった道だ。

ヒヨウがいて、タッカーやミカや皆がいて、だからここまで歩けたのだ。


今、その皆が、心を一つにして祈っていた。


ここは、どうしても、やり切らなければいけなかった。


ミカの詠唱は、鬼気迫る迫力をもってゴロタの白いバリアーの中に響いていて、皆は、ほぼ最後の力を振り絞って精神集中を続けていた。


逃げたいからだ。


もう、生きてさえいない怪物の遊びになど付き合いたくはなかった…。


ホマーの声が、不意に大きくなった。

おそらく、意識はしていないのだろう。


「てんまん神ほうとう神たいよう神げっこう神草木の精霊みずわけ神…」


言いながら、震えるように手を揺すっている。


その声に、イガやセイたちも声を合わせた。


蛭谷の薬師はもっと呪文風の言葉を呟いていた。


世の中には色々な祈りの言葉があるものらしい。


ただ、効果はみな、同じもようだ。


想いを神様に届けたいのだ。


その意味では、助けたまえ、救いたまえ、も、全ての飾りを取り払い過ぎていて、神殿のはずがテントになってしまったようではあったが、意味は同じだった。


神様、助けてください、と願っているのだ。


相手が悪魔では、それしかしようがなかった。


スペルでは…、チェコの持っているスペルでは、とても悪魔とは戦えなかった。


ミカの詠唱は、声を震わせながら長く続いた。


チェコは一心に祈っていた。


皆、体を折るように、地面に額を擦り付けるように一心不乱にいのりつづけた。


と…。


ミカの声が、いつの間にか、途切れていた。


あれ…?


チェコが、ふと頭を上げると…。


ミカが、ドサリ、と倒れた…。


「ミ…、ミカさん!」


チェコは叫んで、駆け寄った。


「あっ!」


ミカの鼻と口に、木の葉が貼り付いていた。


三股に別れた、大きな葉だ。


チェコは慌てて、木の葉を剥がそうとするが、ピッタリと貼り付いた葉は、全く剥がれない。


と、微振動を続けていた樽が、粉々に砕けた。


「馬鹿め!

そんな呪文で悪魔を封じられると思ったか!」


「ミカさん!」


チェコは悲鳴のように叫んでいた。


「油だ!」


ヒヨウが、横からランプの油をミカにかけた。


ピッタリと貼り付いていた木の葉が、微かに浮き、ずれるように捲れて、やっとミカの顔から、剥がすことができた。


「ヒュウ…」


とミカは、笛の音のような音を立てて息を吸い、やがて激しく咳き込んだ。


「ミカさん!」


チェコは必死でミカの体を擦るが、ミカは。


「やられたわ…」


と唸っていた。


悪魔は、巨大な猿人の姿になり、けたたましく笑っていたが…。


「馬鹿はテメエだ!」


プルートゥが、大剣で悪魔に切りかかった。


「生身になれば、やりようはあるんだよ!」


凄まじい勢いで、連続攻撃を開始した。


ゴロタも、再び光の柱を猿人の悪魔に突き立てる。


だが、悪魔は笑い続けていた。

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