表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
661/688

問題

昨日書けてたのに…。

途中な事を忘れて寝ちゃいました…。

雷は、怪物には通用しなかったが、あの黒髪は出なかったな…。


チェコはどうしてか、考えてみた。


雷には始めから耐性があるので黒髪は発動しなかったのだろうか?

そうかも知れなかったが、チェコには判らなかった。


或いはパトスなら、チェコよりよほど錬金術に通じているので判るかもしれない。

パトスの前足では石を操れない、というだけで、もし仮に犬用の静寂の石、等というものがあったなら、パトスの方が絶対に優れた錬金術師なのだ。


チェコは、ゆっくりと、ゆっくりと、梯子を登っていく。


イメージとしては、梯子の縦丸太をカタツムリが進む映像を、いつかチェコは頭に描いた。


それほどの速度で、チェコは物見台を登っていた。


チェコはパトスに雷の事を話してみた。


パトスは微かに唸り、


「…怪物の、あの力には少し変なところがある…」


「変なところ?」


「…見た感じ、皮が裂けて、その中からたくさんの黒髪が出てきていた…。

…だとすると怪物の体の中は、あの毛、という事なのか、それとも一瞬で生えたのか、とにかく普通の生物ではあり得ない体の構造のような気がする…」


確かに、メテオを受け、怪物の皮膚が一瞬、裂けたようにチェコにも見えた。

そこから大量の毛が溢れ、一度は怪物の皮膚を破ったメテオを、毛が絡めとり、体内に戻ったように見えたのだ。


確かに、皮が再生したのは外道の力だとして、破れて黒髪が現れる、というのは普通の生物の動きでは無かった。


「体の中身が毛だったりして…」


チェコはジョークのつもりで言ったのだが、パトスは考え込んでいた。


「…今のままでは、なんとも言えない…」


確かにヒントが少なさ過ぎた。

本来なら攻撃して反応を見た方が良いのだろうが、外道でスペルは吸収するのではやりようが少なすぎる。


そうしているうちにも、怪物はベキベキと屋敷の壁を引き裂き、中の人間を嬉しそうに食べているようだ。

煙の中に、破壊音と悲鳴だけが聞こえている。


ナミが物見台の上に上がったようだ。

と、不意に物見台が、グラリ、と揺れた。


「この野郎!」


と声がしている。


だが、怪物の笑い声もあり、どんどん火勢を増していく火事もあり、誰の声か、までは判らない。


急ぎたいが、万一、怪物に見つかったら物見台から怪物を観察する、という目論みは崩壊するし、同時にチェコたちの命もない。

怪物は、背後でも動くものなら見極められる、極めて高い視力を持っているのだ。


チェコたちは、ただ鈍い甲虫のように、じりじりと梯子を登るしかなかった。


ヒヨウが登り、そしてチェコも物見台から中を見た。


ナミが取り押さえた男を、ヒヨウがロープで縛っていた。


「くそ、エルフめ!」


男は怒鳴っていた。


「静かにしろ!

怪物に聞こえちまうだろうが!」


ナミが耳元で囁くが、


「うるさい!

軍師、なんてふんぞり返って、蝋燭が爆発したら、慌てて逃げ出したんだぞ、あのエルフは!」


ああ、とヒヨウが笑った。


「タメクの奴、蝋燭爆弾で、こっちにハイエルフがいることに気がついたんだ。

きっと血相を変えて逃げ出したろうな」


アハハと、ヒヨウにしては珍しい爆笑を見せた。


「で、あんたは何でこんなところで丸まってたんだ?」


ナミは、冷静に聞いた。

男は、見るところ、兵士では無さそうだった。


「カード屋のお陰で研究室でも爆発が起こり、三体の化け物が外に逃げたんだ」


「三体!」


チェコは驚いた。


「お前らはあれを見たんだろうが、あれはたいした奴じゃない。

問題は吸血鬼とスライムタイガーだ!」


男が言うのに、チェコは、


「え、あれは簡単にやっつけられるの?」


と身を乗り出した。


「あいつはモグモグという小さな妖怪と、風船トカゲという研究室で作ったおもちゃを合成したものだ。

表は外道処置をした風船トカゲ。

風船トカゲは骨も内蔵もない、いわば皮だけのトカゲで、作るのは簡単だが、外側しかないのだから、すぐ死ぬ。

生命ですら無いわけだが、一瞬は生きている。

そこで外道にしてみたのさ」


あ、とチェコは思わず叫んでいた。


「それで、内部はモグモグなのか!」


「うまいこと、そうなった。

面白いだろ」


「お…、面白い、って、あれで何人も死んでるんだぞ!」


チェコは怒ったが、男は笑った。


「なに言ってんだ。

ここは戦場だぞ。

人が何人死のうが、そんなのは当たり前の場所じゃないか。

坊主には、まだ戦争は早かったか?

慣れろよ」


ハハハと笑い、


「あいつには知能も何もないから、ただ餌と見れば食らうだけだ。

面白い事に、モグモグの作用で巨大化していく。

初めは子犬ぐらいだったんだが、どさくさに紛れて、あんなにデカくなった」


楽しそうに男は喋った。


「しかし、ああデカいと、倒すのも難しくないか?」


ナミが聞くと、


「たぶんモグモグの習性で、一定以上に大きくなれば分裂するはずだ」


男は平然という。


「分裂!

外道でスペルも効かない奴が増えるのか!」


チェコは驚いて叫んだ。


「なーに、餌に釣られたところを檻にでも入れてしまえば、それで問題はないさ」


なるほど…、巨大だから難しげに見えるが、実は小さければ、ただの小動物、って事か…。


「それで?

吸血鬼とスライムタイガーって言うのは何なんだ?」


ヒヨウか聞いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ