表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
636/688

逆転

「包囲はまずい。

パトス、どっちに逃げたら包囲を抜けられる?」


ヒヨウが立ち上がりながら、パトスに聞いた。


「…左だ…。

一組の集団を交わせば、包囲は崩せる…」


「よし、いくぞ」


ヒヨウは言うが、


「え、ナミさんはどうするんだ?」


イガは驚く。


「ナミなら、俺たちを簡単に探せる。

まず、安全なところまで逃げるんだ!」


「しかし、そう言ってタカオさんもはぐれたままじゃないのか?」


セイも言うが、


「おい、敵に包囲されたら、ヒヨウ君の言う通り、俺たちは全滅だ。

ここは彼に従おう」


ホマーが言うと、杣人たちは頷いた。


どうも何かのわだかまりが、杣人とヒヨウの間に生まれているようだ、とチェコは感じた。

これだったらタフタに来てもらえば良かった。

タフタは、あまり落ち込んでいるタッカーを心配して、蛭谷と一緒に行ってもらっていた。


「、、チェコ、、今はあまり、、口を挟まないそうがいいわ、、」


チェコの想いを察知して、ちさがチェコをたしなめる。


「でもさ、ヒヨウはずっと良くやっているのに…」


と、チェコはちさにだけ聞こえるように、囁いた。


「彼らも、、いっぱいいっぱいなのよ、、。

それに仲間も亡くなっているの、、」


ハラチの死は、チェコだって悲しい。

だが、悪いのはピンキーで、ヒヨウでは無いはずだ。


しかしチェコたちは急いでいた。

ヒヨウを先頭に、下生えを掻い潜りながら木々の間を小走りにすり抜けていく。


「パトス、敵はどうなってる?」


チェコが聞くと、


「…包囲は抜けた…。

…だが、依然、俺たちは補足されている。

道が険しいので少しづつ差は出来ているが、追っては来ている…!」


「くそー、追跡犬か…。

犬を巻けないのかな?」


「…水場を越えるとか、強い臭いを撒き散らす、とか…、方法はある…。

だが、多方面から追われていると、なかなか難しい。

一度、振り切らないと無理…」


パトスは唸った。


ヒヨウは、岩場を登り始めた。


「イガ、大丈夫か!」


昨日まで寝ていたイガは、顔色も明らかに悪く、半分ロットが抱えていた。


「バブル!」


チェコは、イガをバブルで包んだ。

バブルの中で、イガは肩で息をしていた。


ヒヨウは、しかしペースも全く落とさずに岩場を登っていく。

かなりな急傾斜だったが、ヒヨウの歩くルートは、階段のように歩いて上れた。


チェコたちは、必死に岩場を登り続け。


「パトス、どうだ、敵はどうなっている?」


十分ぐらい登ったところで、ヒヨウはパトスに聞いた。


「…敵は皆、一直線に、岩場に取り付いている…」


「よし、チェコ、土石流を使ってくれ」


おお、とチェコは足を止め、ウサギを召喚、大地のアースも出して、次のターンでエルミターレの岩石を召喚。


「土石流!」


すぐに足元の岩場がグラリと揺らめき。


架空の岩崩が巻き起こる。


すぐに現実の岩も押されて崩れだし、巨大な土石流が大地を揺らした。


「パトス、追跡者は?」


ヒヨウが問うと、


「…全滅だ…!」


パトスは叫ぶ。


おお、と杣人たちは歓喜する。


「お前、判ってここに誘い込んだのか?」


イガは驚いた。

息は静かになっているが、顔色は悪いままだ。


「地形ぐらいは頭に入っている。

チェコ、こっちへ来い」


ヒヨウに招かれ、岩場を横に進むと。


森が途切れ、岩場の突端に出た。


すると、数十メートルの眼下に、森が切り開かれ、小屋がかかっていた。


「おー、小さな鍛冶小屋が出来てるね。

これなら、別に錬金術師がいなくても、小物ぐらいは大量生産できる」


どうやら、大工ではなく、鍛冶場をチェコたちは発見したらしい。


「やってくれ」


その一言で充分だった。

チェコはメテオで小屋を破壊した。


「おお、見事だな。

こりゃあ敵が血眼で追いかけるのも判る」


ナミは、木のてっぺん近くを、猿のように飛び跳ねて移動していた。


軽やかに岩場に降りると、チェコを誉めた。


「おお、ナミも無事だったか!」


と杣人たちは笑顔になる。


「追っ手をどうしようか迷っていたが、さすがヒヨウだ。

迷いの無い行動だな」


「なに。

教えられた通りに動いただけです」


とヒヨウは、顔色一つ変えない。


「朝一番の仕事にしては、いい稼ぎだ。

この調子でやっつけよう!」


ナミが明るく言うと、杣人たちの意気は大いに上がる。


「パトス君。

何か臭いはあるかね?」


ナミはとても明るい人のようだ。

皆も元気になってくる。


「…ある…。

鍛冶場の傍に、おそらく大工が集まっている…。

…だが、今の騒ぎで、警戒するだろうな…」


ふぅむ、とナミは顎に手を置き。


「ま、犬に警戒しながら、接近してみても悪か無いかな?」


問うように皆を見回すと、チェコも杣人たちも頷いていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ