スペル無効化
「爪の罠、仕掛け矢を二つ…」
チェコはアイテムをバラ撒いた。
破壊、を出来るだけ使わせたい。
「ほう。
少年、アイテムをたくさん持っているようだな」
しまった、意図がバレたようだろうか?
チェコはアイテムの必要性を痛感した。
主力召喚獣なども一、二枚はアイテム召喚獣がいたほうが、破壊を使わせるには効果的なはずだ。
後は…。
「ウサギの鎧、これをつけたウサギはパワー一、タフネス二アップ!」
ワッハッハと兵士は大笑いし、
「その一/一のウサギのパワーアップか、ご苦労なこったな。
まぁ、ウサギの巣穴で守ってる、という意味はあるのか。
面白いデッキだな」
二/三のウサギでは、兵士のマンモスや大マンモスを防げない。
とはいえ、巣穴で守られている上、なのでハンザキや多産の女王の支援ならば、ブロック要員には重宝する。
「以上!」
チェコは、アースに余裕をもって、ターンを終えた。
「再生に巣穴か。
なかなか考えているな、少年」
兵士は微笑し、
「それじゃあ俺は、これを出してやろう、パンジードラゴン四/四、飛行だ!」
おお、とついチェコは喜んだ。
赤魔湖のカードショップで売っていた奴だった。
確か緑でパワーアップ、黒で毒を持ち、青で飛行を失う、という凄いドラゴンだった。
仕掛け矢はあるので、四のタフネスなら即座に落とすこともできるが、チェコがアイテムを出した理由は別にある。
ホイホイ打って消費するわけにはいかなかった。
「以上」
と兵士が言ったので、チェコは、
「ターンエンドに多産の女王、出産」
ウサギが二体増えた。
「俺のターン、ウサギの鉄爪をウサギに装着!」
と、鎧とは別のウサギに鉄爪を付けた。
「これでウサギは三/二だ!」
「そして、もう一体のウサギに、ウサギの兜!」
二/三のウサギ二体と三/二のウサギが一体になった。
「それから花クラゲを召喚!」
もっと先のつもりだったが、パンジードラゴンが出たので、空中のブロックが必要だった。
幸運にも、八/八のクラゲになった。
「くそ、毒持ちか…」
兵士は唸る。
もっと小さいと予想していたので、チェコには余裕が出来た。
「以上!」
兵士の目付きが鋭くなった。
チェコの並べている召喚獣の攻撃が全て通れば、兵士は即死になる。
これは本当の決闘なのだから、それは真実の絶命だった。
「それなら、俺はこうするぜ。
軍旗、自分の操る召喚獣が全て緑だったら、全ての召喚獣をプラス二/プラス二する」
しまった。
エンチャントデッキだったか!
あっ、という間に大マンモスは十/十になり、マンモスが七/七、パンジードラゴンは六/六になった。
チェコには、エンチャント破壊などの小技のカードは持っていない。
スペル無効化で対処するしかなかったが、虚をつかれてタイミングを逃してしまった。
「ふふふ」
兵士は笑い、続けて、
「軍太鼓、戦闘時、自軍の召喚獣は二/二プラスだ!」
これは即座に、
「スペル無効化!」
と打てた。
軍旗を落とせなかったのが、つくづく悔やまれる。
「やるな、以上だ!」
召喚獣をエンチャントでパワーアップするデッキは、普通は小さな召喚獣でする事が多い。
それなら数ターンで複数の、それなりのサイズの召喚獣を並べられ、一気に攻められる理屈だ。
だが兵士は それを大型召喚獣で行った。
元々がサイズの大きい召喚獣が一斉にもう一回り大きくなるのは、かなり心臓に悪い。
チェコは再び、ターンエンドにウサギ二体を増やし、
「ハンザキ二号、召喚。
そして!」
もう、やるしか無かった。
「エルミターレの岩石!」
「やはり、そういう奴か。
メテオを連発した大量アースはどうやってたのか、考えていたところだぜ!」
兵士は叫び、
「破壊!」
エルミターレの岩石が砕けた。
チェコは、奥歯を噛み締めるが、
「以上!」
と言った。
「ケケケ、それじゃあ、その花クラゲを瞬殺、で殺す」
「スペル無効化!」
チェコは、弓兵たちがスペル無効化を持っていたので、今や八枚のスペル無効化を持っていた。
が、どうも、まだ落とし方に慣れていなくて、軍旗も落とせなかったし、今の破壊、も落とせなかった。
不意を突かれると、タイミングが狂うみたいだ。
ち、と兵士は舌打ちし、
「じゃあマンモスを召喚!」
と叫ぶ。
チェコが動かなかったので、
「以上!」
と宣言した。
チェコはターンエンドに、ウサギを産んだ。




