表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
621/688

溜池

この日は最初は順調だったが、パーフェクトソルジャーとピンキーに襲われ、ハラチが死に、モチは行方不明になってしまった。


「モチも子供ではない。

山で何をすればいいのか、ぐらいは判っている。

怪我さえしていなければ、自分一人ぐらいはなんとでもなる」


と杣人のリーダーは言う。


「だがホマー。

怪我が無ければ、俺たちからはぐれはしまい?」


とロット。


「いや、ああいう場合だったし、少し転んだ、だけでも見失う可能性はあった。

何にしろ杣人が山で困る、なんて事はそれほどは無いはずだ」


とリーダー、ホマーは言う。


「どの道、今は探すのは無理だ。

モチの無事を祈るしかない」


ヒヨウは残念そうに語った。


チェコたちは干物や麦せんべい、水で戻した干し飯を食べ、早々に眠った。


翌日、チェコたちは日の出と共に出発した。


イガは相変わらずで、包帯は血と膿の混ざった液体で濡れていた。

丁寧にエルフ酒で洗うが、それ以上の事は出来ない。

キャサリーンによると、二度ほど目覚め、粥は食べたらしいから、現状では回復は順調、と見るしかなかった。


「今日は先に進んで、村の東側から北へ向かう。

だが敵も先回りしてくる可能性もある。

兵は、下の平地に出てしまえば、山を回り込んで歩くよりは余程早いからな。

まだ地の利はこちらにある、と思いたいが、二万も兵がいれば、この辺に詳しいものがアイダス以外にもいるだろうしな。

追われたら、はぐれないよう注意しよう。

むろん助けられる仲間は助ける努力はするが、今は攻撃を続けないと、山で逃げ回るだけでは意味が無い」


とヒヨウは話す。


洞窟を出ると、その岩山を登って上の森に入っていく。

そこは、あまり下生えの無い、湿地の森に似た森林だ。

チェコが聞くと、


「ここはまろびとの手が入っている森なんだ。

栗の木や果樹、薪や建材用の樹などが植えられていて、よく手入れがされていて歩きやすい。

距離を稼いでしまおう」


ヒヨウは答え、スタスタと歩いた。


「そういうのはリコの村にもあったけど、村の北側に繋がっていたよ」


「まろびとたちは平地で追われて逃げてきた者たちなので、大切なものは隠すようにしているんだ」


森を抜けると、ため池に出た。

森を維持するためのため池らしい。


「水場にはピンキーがいるかも…」


チェコは呟く。


「可能性はゼロではないが、ここならすぐに逃げられるから心配はいらない」


ヒヨウは受け合い、池のほとりを歩いていく。


「対岸から見られないか?」


杣人のリーダーも心配する。


「あの辺は、とてもノンビリこっちを見張れるような場所では無いんだ。

いわゆる動物森となっている」


「あ、毒キノコや食虫植物とかの!」


チェコも黒龍山の森は知っていた。


「そうだ。

だから気にしなくていい」


「すぐ逃げられると言うのは?」


セイが聞くと、


「動物森に逃げ込めば、追手はルートを知らないから、楽に片付けられて一石二鳥という訳だ」


チェコたちは溜池を抜けて急斜面を登った。

ここも見る限り登れそうもない角度の壁面だったが、ヒヨウの選ぶルートならキツ目の坂道程度に感じた。


長い斜面を登りきると、結構な標高の丘だ。

遥か遠くに戦場も見えていたが、戦えるほど近くは無かった。


「だいぶ遠ざかっているな?」


ロットの問いに、


「安全なルートであることが、イガのためにもなるからな」


ヒヨウは説明する。


丘を下ってしばらく歩くと、右手が広い平原になる。草原に、瘦せた木が、ぽつんぽつんと立っているような場所だ。


「なんか、水の匂いがする」


チェコが言うと、


「…これは一面の湿地だ。

底なし沼のような泥の原だぞ…」


パトスが教えた。


草原は、前にチェコも歩いた湿地と地続きの場所だという。


半日かかってチェコたちは、日が天に届く頃、ようやく戦場の兵たちの轟が届く岩場によじ登った。

そこはまろびとの村の北東に位置する岩山のようだ。


平地では既に、十機以上の投石機が作られ、兵たちはせっせと石を集めているようだった。

チェコはウサギを大量に出して、五発のメテオで全ての投石機を焼き払った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ