夜の子供
チェコは四本ほど、細い木を切り倒し、スライムの枝の下で、中心を蔦で縛るように組み上げ、払った枝で屋根を葺いた。
出来上がる頃には、森の中はすっかり暗くなっていた。
チェコは、枯れ枝を集め、火を熾した。
「ふぅ…。
後は何とか、今晩はお化けに見つからないように気を付けるだけだね」
ミカは、木の葉で作った座布団の上に座り、
「…オ…、オバケ…?」
「うん。
特に注意しないといけないのが、山人。
夜の子供たち、とかいう妖精の部族なんだけど、人間に成りすまして友達になりたがるんだ」
「お友達になっちゃいけないの?」
「友達だから、って言って、その人の事を根掘り葉掘り質問して、その人の全てが判った、と思ったら、その人を食べて、その人、そのものに成りすますんだよ。
後で町に帰って、夜の子供だと分かって、おまじないで祓っても、食べられちゃった人は、もう戻らないからね」
「そ…、それ、ちょっと怖くない…?」
ミカは引き攣った。
「だから山人が来ても、決して言葉を交わしちゃあいけないんだ」
パチッ、と木が爆ぜる。
「そうだ、お昼のおじやがあるんだ!」
チェコはリュックからおじやのを椀を取り出すが、ミカは、
「ごめんね、チェコ君、あたし好き嫌いが激しいの…」
「美味しいのに…」
チェコは言ったが、すぐにリュックから大きなアケビを取り出した。
「じゃあ、フルーツはどう?」
ミカの顔が輝いた。
と、その時。
ドンッ、はるか上空から、大きな岩が落下したような音が一つ、響いた。
「なに?」
チェコは、人差し指を立てて、しぃ、と言い。
「山女。
音を立てないで、やり過ごそう…」
と囁いた。




