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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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待ち伏せ

パーフェクトソルジャーが、ブラスバンドのような雄叫びを上げた。


「くそ、この叫びを聞きつけて兵士が来るぞ!」


杣人のリーダーが叫ぶ。


チェコはパーフェクトソルジャーを防ぐため、ハンザキを召喚した。


「とにかく皆、何かスペルを持っていないか?」


ヒヨウの問いに、各々が答え、火の玉や雷など基本的な攻撃スペルは持っている事が解った。


ハンザキが、パーフェクトソルジャーに首を噛みつかれ、ベリッと引き裂かれた。


「再生、ハンザキ、ハンザキ七号!」


ハンザキたちはすぐに再生するが、リアルバトルでは再生時間がかかり、すぐにパーフェクトソルジャーをブロックする、とはいかない。


チェコは、嫌な汗をかきながら透明な壁を召喚した。


「よし、カウントダウンして一斉にスペルを撃ち込むぞ、三、二、一!」


ヒヨウの号令で、チェコはカホーエンの炎を使った。


陰狼も炎を吐き、杣人たちもそれぞれの火力を重ねると、パーフェクトソルジャーは、また大きく叫びながら、灰になったように消えていった。


「あんなんが何百も出たら、確かにこの世がおしまいだな…」


セイが、ぞっとしたように呟く。


透明な壁も、ヒヨウのカウント中に砕かれていた。

十以上の攻撃力があったらしい…。


「ともかく、兵に囲まれる前に、ここから去るぞ!」


ヒヨウは叫び、チェコたちは走った。


「この道はバレる恐れがある」


せっかくのエルフの道だが、ヒヨウはしばらく走ってから藪に飛び込んだ。


チェコはただ、ヒヨウの背中だけを追って走った。


やがて道は岩場に出、走る訳にもいかなくなる。

三十分ほどかけて岩場を登ると、木の茂みに身を隠した。


岩場の下に、やがて兵たちが現れた。


「向こうの道だ!」


岩場の奥に続く道に、兵士約二十人は走って行った。


「やり過ごしたのか?」


と杣人のリーダー。


「今のところはな。

少しキツイが、この岩山を乗り越えて先に行けば、たぶん完璧に敵の目をごまかせる」


チェコたちは、今度は岩山を登ることになった。


一見すると無茶のようだが、ヒヨウがルートをとると、這い進めればなんとか登れた。


一時間ほどでチェコたちは岩山の頂上に着いた。


「いい眺望だな」


プーフは言い、


「ここから攻撃を加えるのか?」


「いや、それはできない。

即座に位置がバレるからな。

まず、ここを降りてからだ」


ヒヨウの返答に、フン、とプーフは鼻で笑い、


「なら、ちょっと俺が、飛んで撹乱してやろう」


言うと、ビュン、と一陣の風になって消え去り、まろびとの村の斜め、チェコたちから数キロ離れた敵陣で陰狼を暴れさせた。


爆弾が激しく爆発し、何千人の兵が飛び散った。


と、すぐプーフは戻った。


「よし、いい陽動になったはずだ」


パーフェクトソルジャーの位置から反対に動けば、ちょうど爆発を引き起こせる場所だった。


「ここから降りるぞ」


ヒヨウを先頭に三十分歩くと、道に出た。


「これはなんの道だ?

エルフ道じゃ無いよな?」


セイが聞く。


「ああ。

これは実は、まろびとの村の抜け道の一つだ。

だから誰も知らない」


整った道を一時間歩き、また山に入る。


しばらく登ると、小さな水場が出現した。


「ここで休もう」


逃げ回って半日が過ぎていた。


ハァ、と腰を下ろして、初めてヘトヘトに疲れていることに気がついて驚く。


「追いかけられるのは、普段以上に疲れるんだ。

常に神経を張りつめさせているからな。

疲労を取らないと大怪我につながるから、しっかり休もう」


茶を沸かし、粥を煮る。


「しかしパーフェクトソルジャーまで出てくるとなると、おちおち攻撃も出来ないな」


と杣人のリーダー。


「最初から判っていた事だ。

倒す要領も覚えている。

これからは移動距離を長くして、一日、一、二度でいいので攻撃を続ける。

そうすれば敵はこちらに備えなければならない分、まろびとの村への兵力を割かざるを得ない。

俺たちのように動き回れば、外周の森を守るだけでも何千もの兵を俺たちが引き付けているわけだ」


ヒヨウの言葉に、チェコが。


「そうすると、どうなるの?」


「まろびとの村は落ちにくくなり、戦いが長期化する。

すると二万の軍隊は兵糧が尽きて、引かざるを得なくなる」


おお、とチェコは感動した。


「なるほど、良い作戦だね!」


「そう、上手くは行かせないけどね!」


はっ、と辺りに目を凝らすと、水場の回りは、ピンキーと左腕、それに十人の兵士が囲んでいた。


「くそっ、ピンキーめ。

やっぱり出てきたか!」


チェコは叫んだ。

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