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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
58/688

出現

パトスは、キャサリーンを振り返った。


「キャサリーン。

山…小屋はこっち…だ」


周囲は、今、まさにチェコの放ったスペル月齢により、岩崩が起こったばかりで、まだ砂ぼこりも完全には収まっていない…。


岩沿いに十メートルほど下り、今は岩の裏手に当たるので見えないが、深く豊かな森に入れば、猟師小屋はすぐなのだという。


「チェコ君を放っておいていいの?

あの包帯女も一緒なのよ?」


パトスは微かに耳を揺らした。


「チェコが平気と言っている。

大丈夫」


「パトス君は、チェコ君を信じているのねぇ」


「あいつは、ダメなときは、絶対、助けて、っていう奴」


「…チェコ君の、弱さを信じてる…、のね?」


「弱いこと大切。

自分が弱い…、知らない奴、きっと山では、死ぬ…」


そろそろ森に入ろう、というとき、二人の前に、男二人が立ち塞がった。

その一人は、前に見たことのある男だった。


「えーと、タッカー君、だったかしら?」


「これはこれは、皆さま、御機嫌よう。

タッカー・トラッテーロでございます。

そしてこちらの紳士は…」


横に立つ大男を両手で仰ぎ。


「前オルシュ王国優勝者であるプルートゥ様です!」

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