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出現
パトスは、キャサリーンを振り返った。
「キャサリーン。
山…小屋はこっち…だ」
周囲は、今、まさにチェコの放ったスペル月齢により、岩崩が起こったばかりで、まだ砂ぼこりも完全には収まっていない…。
岩沿いに十メートルほど下り、今は岩の裏手に当たるので見えないが、深く豊かな森に入れば、猟師小屋はすぐなのだという。
「チェコ君を放っておいていいの?
あの包帯女も一緒なのよ?」
パトスは微かに耳を揺らした。
「チェコが平気と言っている。
大丈夫」
「パトス君は、チェコ君を信じているのねぇ」
「あいつは、ダメなときは、絶対、助けて、っていう奴」
「…チェコ君の、弱さを信じてる…、のね?」
「弱いこと大切。
自分が弱い…、知らない奴、きっと山では、死ぬ…」
そろそろ森に入ろう、というとき、二人の前に、男二人が立ち塞がった。
その一人は、前に見たことのある男だった。
「えーと、タッカー君、だったかしら?」
「これはこれは、皆さま、御機嫌よう。
タッカー・トラッテーロでございます。
そしてこちらの紳士は…」
横に立つ大男を両手で仰ぎ。
「前オルシュ王国優勝者であるプルートゥ様です!」




