昔の道
仕事の都合で、今週はお休みします。
再開は5日からです。
よろしくお願いいたします。
確かに…。
ピンキーたちは、チェコたちの命など何の興味も持っていないが、お宝は欲しいのだ。
宝が消える可能性のある行動はしないはずではある。
「まー、普通はそうなんだけど、敵は策士だから気を抜いちゃ駄目よ。
横取り、ひったくり、何でもアリなのよ」
と、キャサリーン。
確かに、木からぶり下がったり、相手の予想を外す行動は、彼らの特技だ。
上から来るのか、下から来るのか、全く判らなかった。
と…。
橋の上に、何かが落ちていた。
「何だ…?」
チェコは首を傾げるが、タフタは、
「青蛇…。
この山で、一番、毒が強い蛇だ」
と教えた。
うげー、とチェコは叫ぶが、タフタは棒で、蛇を引っ掻けて、退かそうとする。
「待って!」
とキャサリーンが声を上げる。
ん、とタフタが振り返ると。
「もしかすると起爆装置が付いているかもしれないわ!」
言われてみれば、充分、そのくらいはやる連中だ。
「しかし、こいつは噛まれたら必ず死ぬ毒たぜ。
退かさないと通れねぇよ?」
タフタとキャサリーンは見つめ合って黙り込んだ。
「爆弾が、蛇の下にあるの?」
チェコも聞いた。
「判らないわ」
「だが、動かさん訳にゃ…」
「石化、持ってるよ?」
チェコは、タッカーから口止め料としてカードを巻き上げていた。
「それよ、チェコ君!」
キャサリーンが叫び、チェコは青蛇を石化した。
青蛇は、ゆっくりと石になっていった。
「これはなかなか便利なもんだな。
俺も持っとこうかな」
タフタも感心する。
チェコたちは石の横を数分歩き、
「やっぱり、ただの蛇だったのかもねー」
とチェコは言う。
「が、俺らを少しでも足を止めるように、わざとあそこに置いたんかもしれねーよ」
タフタが返すと、
「でも、そんなに何分も、蛇がじっとしているかな?」
それは不思議だ。
「なーに、蛇ってのは、餌を食わせりゃあ、しばらく動かないものさ」
なるほど、あのサイズの蛇なら、ウサギくらいは飲むかもしれない。
「まー、判らないことを言い合ってても仕方ないわ。
幸い、すぐチェコ君が石化してくれたからタイムロスは殆ど無いはず。
注意しながら、気を取り直して急ぎましょ」
「…ここでのバトルは、敵もリスクが多いはず…。
橋を俺たちが焼けば、敵だって困る…。
…ピンキーたちが、この湿地に詳しければ判らないが、そうでなければ、敵は先に進むはず…」
パトスは語った。
「この湿地に詳しい奴なんて、エルフぐらいしか思い付かんな」
とタフタ。
「なんせ野性動物でさえ、底なし沼にはまるんだからな。
この橋を作るまでは、年に何人かは沼に飲まれたもんさ」
ん、とチェコは閃いた。
「橋を作る前に歩いていたルートがあるの!」
それをピンキーが利用したんじゃないのか!
我ながら鮮やかな推理、とチェコは自惚れたが、タフタは、
「あるよ。
その上に橋を作った訳さ」
考えれば、当たり前だった。
「この橋の前は、危ねー所に板を渡したりしてたんだが、虫が食っちまったり、濡れて腐っちまったりしてな、それで人が死ぬのさ。
で、この山の皆が集まって橋を作った。
この高さも、増水の時にも水に漬んねーように調べたんだ。
結構な大工事だったぜ」
タフタは、思い出して語った。
湿地帯はかなりの広さだったが、やがて先に森の入り口が見えてきていた。
走り出したいところだが、油断するわけにはいかなかった。
そういう心理を読んで来るのが灰かぶり猫たちなのだ。
チェコたちは、用心深く棒を叩きながら歩み続けた。
長かった橋から降りた時には、心底、ほっとした。
「ここからなだらかな道が続いて、先が牙谷だ。
やっぱり牙谷が本命だと思うが、その途中も何かあるかも判らん」
と、タフタが唸った。




