七段落とし
良い香りの森を歩き、緩やかな上りを進んでいくと、タフタが、
「さあ、ここから七段落としと言う急な崖の下りになる。
このルートの一番の難所だな。
崖の下りは本当に難しい。
ロープはあるが、今は信用しないで持ち合わせのロープで降りるぞ」
言って、崖に打ってある木の杭を、足で確かめてからロープを括った。
「俺が見張るから、チェコから降りて、一段目を降りたら、そこで安全を確認してくれ」
「判った」
チェコは言い、身軽に崖を降りた。
確かにロープが無かったら、とても下れない場所だ。
あちこち、足場に迷いながら、なんとか一段目の崖を降りた。
高さは、せいぜい五メートル程だ。
二階屋と考えたら、飛び降りてもいい位だが、チェコの立つ足場は、多分二メートルも無いくらいだった。
うっかり転んだら、そのまま転落しかねない。
確かに、地味に難所感が漂っていた。
続いてキャサリーンが降りてくる。
「パトス、臭いは大丈夫?」
「、、チェコ、敵はパトスの鼻に気がついていて、臭いを誤魔化して来ているわ、、」
確かに漁師の村も池の先の岩道でも、パトスを上手く欺いていた。
「くそぅ、ピンキーたちめ!」
チェコは毒つく。
ここは危険だ…。
チェコは考えた。
一人は完璧に手も足も出ないし、上下の二人もロープを守りながらの戦いになってしまう。
「とにかく皆、回りを注意するんだ!」
チェコも、ロープが揺れないよう、下でロープを握りながら、パトスとちさに言った。
「…どこかで仕掛けて来そうだな…」
パトスが、鼻に皺を寄せながら言う。
確かに、ここで襲われたら、一溜まりもない…。
キャサリーンが無事に降りてきた。
タフタは軽々と、ロープを滑って降りて来て、クイっとロープを引くと、ロープはほどけて落ちた。
数歩、進むと、二つ目の崖だ。
この岩場は、まるでアミダくじのように互い違いに無数の崖が岩場にできており、崖の狭い足場からでは、隣がとうなっているのかでさえ、見きれなかった。
また崖の途中にも、岩にへばりつくように雑草等が生えているため、余計に視界は塞がれる。
タフタは再び、ロープを垂らした。
チェコは急いで岩を下った。
タフタを見ていると、ロープに片足をかけて、滑るように素早く崖を降りるようだ。
「、、チェコ、無理をしたら危ないわよ、、」
ちさが止める。
「えー、なんか、やれそうな気がするけど…」
「…ちゃんと足をかけて降りろ…。
俺も一緒に落ちるんだぞ…!」
パトスも怒るので、、チェコは滑るのを止めた。
瞬間、チェコの足のすぐ下で爆発が起こった。
「うわっ!
右手の火炎弾か!」
チェコは叫ぶ。
そのまま滑っていたら、確実に当たっていた。
チェコは岩にへばりつくが、
「…止まるな…、狙われるぞ…」
パトスが吠える。
か、敵はそれきり、攻撃を止めてしまった。
チェコは用心深く、ゆっくり降りたり、滑ったり、を繰り返して、下の崖に辿り着いた。
そこで改めて周囲を見回すが、全くどこから撃ってきたとも判らない。
崖の下は密林で、向かいには木の繁ったなだらかな山があるだけだ。
左側は、崖の岩が競り出していて先は見えない。
右は内側に深く反っていて、誰もいないのは明白だった。
「くそー。
隙を見つけて、また攻撃してくる腹だな、本当に嫌な奴らだな!」
腹を立てるチェコに、パトスも、
「…奴らは本当のクズ…!
誇りも何もないから、何でもやってくる!」
パトスも、怒りを吐き捨てる。
キャサリーンがロープを降り始めた。
チェコはロープを守りながら、警戒する。
「しかし、あいつら本当に、よく死なないよね?
俺、腹も刺したし、崖も転げ落ちてたよ?」
「、、たぶん回復系の魔法かなにかを持っている、、本当に手強い連中よ、、」
ちさも語った。




