寄生虫
チェコたちが戻ってくると、キャサリーンたちもすっかりくつろいで談笑していた。
「川って落ち着くわねぇ」
キャサリーンはのんびり笑う。
「少し火を炊いて干し飯を食べよう。
体力も、落ちる前に回復すべきだからな」
チェコやタフタやウェンウェイも手伝って、枯れ枝を探す。
「タッカー兄ちゃんは休んでていいよ」
「ごめんチェコ」
ケケケとチェコは笑い、
「前にもウスバ虫に刺されちゃったしね」
すっかり忘れていたタッカーは、赤くなって、
「あ、チェコ、そんな事言うなよ…」
ケラケラ笑うチェコに、ミカも、
「なに、タッカー、ウスバ虫に刺されたの?」
タッカーは赤くなりながら、
「それで服は焼くしかなくって、ヒヨウの服を借りていたんだ」
「まー、誰でも、一度や二度はウスバ虫にやられるのよね」
キャサリーンも笑う。
薪は、キャンプする訳でもないので、すぐ集まった。
鍋に湯を沸かし、干し飯を入れ、味噌や干し魚等を煮る。
「あー、こんなんだったら、もっとバッタを取ってくるんだったな」
とタフタ。
あー、とミカは頭を抱える。
「師匠特製鍋を思い出したわ。
毎日、虫が入ってないことを祈ったもんよ」
「そんなに毎日、虫が入っていたの?」
チェコも驚いた。
それも逆に珍しい。
「祓い師っていうのは、儀式半分、薬半分みたいなもんなのよ。
薬を飲ませれば一発で治る病気なら、儀式のフリをして薬を飲ませりゃあ済む訳じゃない。強い神通力のあると評判の祓い師なんて、みんな薬師みたいなもんなのよ。
で、虫って奴は、毒虫なり、食べられる虫なり、絶対食べちゃいけない虫なり、何らかの意味があって、その勉強のために日々の食事がある、みたいなもんでね。
まー、ムカデやらカマキリやら、果てはわざと寄生虫を持つ虫まで食べさせられたもんよ」
「おいおい、うちの叔父さんも寄生虫で死んだんだぜ」
タフタが驚いた。
「あー、祓い師に来る仕事の何割かは寄生虫とかが多いわけよ。
寝込んでも治らない長患いなんて、血液病とか結核とかじゃなければ、まず寄生虫なのね。
で、自分でどう痛いのか、とか腹がどうなるか、とか体験しておけば、一番判るものな訳よ。
それで、入れては出し、入れては下ししていると、祓い師の力も、より大きくなるものなのね…」




