声マネキ
やはり、普通の道は歩きやすかった。
山頂の細い道とは違い、道幅も広く、虫と遭遇する確率も格段に減った。
道が楽であれば、自ずと余裕も出来て、気も楽になる。
「でもタッカー兄ちゃん。
虫系の召喚獣も入れてないの?」
「今は、入れてないよ」
タッカーは、ポカンと言う。
「僕は霧のエンチャントを張って攻撃するデッキだから、霧を気にしない生物しか入れないからね」
「毒のある蜂や百足、サソリなんかは入れてもいいんじゃないの?」
チェコの問いに、タッカーはふーむ、と考え。
「良いカードがあれば、入れるかもしれないよ。
別に、本物の虫は苦手だけど、召喚獣まで嫌うつもりもないよ。
僕も一応、スペルランカーなんだから」
やがて水の音もずいぶん近づいて来て、道は川に出る。
山合の、巨体な岩だらけの渓流だが、しばらくは道に連なり、なだらかな流れになるようだ。
川には岩が幾つも突き出ていて、白い水しぶきが道からでも見えた。
「よし、それでは、一休みするか」
ヒヨウがロープを解き、皆、次々にロープを外していく。
川原の岩の上に座って、チェコは、さっきトレースしたカードを、ランタンの火に近づけた。
「やった!
声マネキ 四/八の召喚獣だ!」
喜ぶチェコだが、タッカーは、
「思うほど、強く無いんだね。
あんな巨体生物だから、もっと化け物なのかと思ったけど?」
「そーだよねー、十/十ぐらいでも良いよね!」
チェコも、あのときの巨大な姿を思い出して言った。
「たぶん用心棒は入って無かったんじゃないかしら。
それなら、そんなもんなんじゃないの。
何にしろ、ライフ八は結構強いわよ」
ミカが話に加わる。
「あー、トレースの失敗か…」
悔やむチェコだが、
「あの闇の中だ。
トレース出来ただけでも、相当の幸運だろう。
四/八、悪くないじゃないか」
ヒヨウが語る。
「まー、そうだねー」
大型召喚獣なことに間違えは無かった。
実戦でどこまでやれるかは、用心棒抜きではただのカタツムリなので判らないが、デュエルならば意味がある。
チェコは声マネキの使い方を色々考えてみた。




