生食
水の音は、だんだん大きくなってくる。
と、タフタが、ほっ、と声を出して。
「へへ。
ほれ、バッタ、捕まえたぜ」
タッカーに見せると、タッカーは飛び上がって恐れた。
ロープで繋がっているため、皆、よろめいた。
「タッカーも、あれ、だけど、タフタ、餓鬼じゃ無いんだから、止めなさいよ!」
ミカがキレて怒鳴った。
タフタは、ワハハと笑い。
「驚きすぎだろ」
言うと、バッタの足をもぎ、羽をむしって、ランプの火で炙った。
すぐに香ばしい匂いが漂った。
と、タフタは自分の口に放り込む。
「ほらな。
旨いもんだぜ」
タッカーは、あまりの事に言葉もなく、タフタから距離をとったが、
「まー、あたしはしないけど、うちの師匠も同じように食べたり、あと、茹でたりしていたわね」
ミカも気味悪げに言った。
「バッタはしないけど、川虫とか、煎ってカリカリにするよね」
チェコは、あまり抵抗は無いようだった。
「まぁ、非常の場合もあるから、覚えておいても損はないぞ。
スズメバチも煎って食べるし、子供は大変に旨い」
おー、ありゃあご馳走だな、とタフタは喜ぶ。
「あとは、枯れ木の中にいる、大コガネの幼虫とかな」
タフタも盛り上がって、
「ありゃあ旨いんだよな。
よく子供が病気をした時に、栄養をつけてやるんで食べさせてるよ」
「それは知らない!」
と、チェコも盛り上がるが、タッカーは、
「ごめんね。
もう虫の話はよしてくれないかな…」
と弱々しく呟いた。
「海の近いところに行くと、生の魚を食べたりするかな」
ウェンウェイが話した。
「魚が、生で味がするのか?」
タフタが聞くと、
「海水の味かな」
「おー、なるほどー」
チェコは納得した。
「それに、海にも蟹やエビがいて、それも生が旨いかな」
えー、生ぁ!
と、チェコは驚いたが、タッカーは呻いてしゃがみ込んだ。
「ほら、虫や魚の話は終わりだ。
タッカー、川まで行けば汗を流せる。
そこまで頑張ろう」
ヒヨウの言葉に、よろよろとタッカーも立ち上がった。
道は不意に、急な登りになったが、
「ほら、ここからは白い道だ。
だいぶ良いだろう」
何時間かぶりに、チェコたちは普通の道を歩く喜びを知った。




