軍事スペル
「あいつら、軍事スペルに手を広げようとしていたのね!」
キャサリーンが叫んだ。
「え、つまり…、どういう事?」
チェコが聞くと、
「普通のデュエルカードは、ルールが法律で細かく決まっているものなのよ。
一アースで十の強さの召喚獣は法律上作れないわけ。
絶対無敵の召喚獣等も許可されないわ。
バランスが狂わないことは、スペル業界全てが注意している事なのよ。
ただし軍事カードは、いつの時代も天井が抜けているわ。
つまり、戦争を仕掛けるつもりであれば、平和条約を破棄するつもりな訳だから、開戦通告さえルールを破らなければ、法律違反のオーバーパワーなスペルを予め可能な限り貯めておいて、それから宣戦布告をすれば、とっても有利に戦いを進められる訳よ。
軍事スペルなら、ルール無視の低アース高機能召喚獣も作れるし、強力な攻撃スペルも使い放題よ」
「つまり、安くて強いのがパーフェクトソルジャーな訳か!」
チェコも状況を理解して驚くが、ヒヨウが。
「それだけじゃない。
もし妖精さえ手に入れば、パーフェクトソルジャーには天使並みの知能が生まれる。
自分で考え、学習して強くなるんだ。
この召喚獣兵士は、学習する上に、死んでもカードに戻るだけだ。
そして、次に召喚されるときには、学習した分、前より確実に強く育っていくわけだ」
「そんなものを戦争に使おうっていうの?
気が狂ってるわ」
ミカが叫んだ。
「いったい、どこの国がそんな事を考えているのかな?」
ウェンウェイが怒った。
「さあな。
俺は、マッドスタッフの事までしか聞けなかった」
ヒヨウは残念そうに首を振った。
バブルの泡は蟻塚を下って、森と湖に近づいてきた。
が…。
上空から、一匹のドゥーガが、泡に襲い掛かった。
パチン、と泡が割れ、チェコたちは地面に落ちた。
「左腕の奴、生きていたのか!」
チェコは叫んだ。
「ドゥーガに変身しさえすれば、上空で蟻も払い落とせる。
だが、奴も蟻塚に頭から突っ込んだんだ。
相当、毒を喰らっているはずだ。
今なら倒せるかもしれないぞ!」
ヒヨウも叫ぶ。
が、タッカーが言った。
「あの…、とりあえず、蟻塚からは離れたい、って思うんだけど…」
そうだ、と気がついて、チェコたちは慌てて走った。




