遭難
「集団召喚って、ゴロタは出ないよね?」
チェコが聞くと、ミカは。
「まー、でも、そういう大きい奴が出ないのなら、カード的には全く意味がないわよね」
と答えたので、チェコは興奮した。
「え、出るかもしれないの?」
「止めてよ。
こんな村にゴロタを出すのは。
意味が無いから一山いくらで売ってるんじゃないの、って話よ?」
ミカがぞんざいに答える。
「でもさー、出るか出ないか判らないと、いざって時に使えないよ…」
チェコは言うが、ミカは、
「いざって時に、そういうよく判らないカードは使わないの!」
と叱った。
窓辺の布団で、一塊の毛布の山のようになって寝ていたタッカーが、むくり、と起き上がった。
「あれ、どうしたの…?」
ミカは、チェコとパトスが接合で一体化した、と怒りを込めて話したが、タッカーは、
「へー、一山いくらの捨てカードに、そんな面白いカードが入ってたんだ。
僕も見たいな!」
と話に喰いついた。
「まー、行たきゃチェコと行けばいいわ。
パトスも一緒なら、行っても良いわよ」
チェコはノリノリに、
「行こうよ、タッカー兄ちゃん!」
と、早くも立ち上がった。
タッカーは、
「うん、その前にちょっとトイレを…。
ミカちゃん、この辺って服、売ってないかなぁ?
ヒヨウの服を借りていたんだけど、着替えもないんだ」
ミカはカバンから爪磨きを出して、爪の手入れをしながら、
「下で聞いてみれば。
山だから、タッカーが着るようなものがあるかは判らないけど、何かしらはありそう、とは思うわよ」
チェコとタッカーは揃って一階の酒場に降りた。
「あー、カードショップの手前にあるオリベェさんのところに、村の人間が着るような物でいいならあるよ」
朝に会った女性ではない、中年男性が教えてくれた。
路地を歩くと、なるほど明るい中で見ると、幾つかの商店が並んでいる様子だった。
言われた店は雑貨屋で、生活用品一般を扱っているようだった。
シャツやズボン、山間部ではまだ必要なのかセーターなどが売っている。
チェコは、タッカーの買い物などはすぐ終わるものと思っていたが、タッカーはあれこれ選んで、なかなか決まらない。
「タッカー兄ちゃん。
そこにあるだけしかないんだよ?
早く決めなよ!」
タッカーが着れるサイズは、せいぜい五着ほどなのに、とっかえひっかえ悩んでいる。
と、オリベェの店のドアが、凄い勢いで開き、
「大変だ、船が遭難した!
カヌートが出やがったらしい!」
飛び込んできた男が叫んだ。




