鳴子
「でも、じゃあ、どうするの?」
動くな、と言うのも難しい要求だった。
「まー、そうさな」
タフタは言って、
「しばらくは俺は寝るから、見張っていてくれよ」
言うと、布団に潜り込んだ。
見張か…。
しかし窓辺にはタッカーが爆睡していて、外を見ることも出来ない。
仕方なく、チェコはミカに話しかけた。
「じゃあ、ピンキーが動くまで、ずっとここに泊まるって事?」
「そうかもね。
ピンキーたちが持久戦に持ち込むつもりならね。
全ては左腕や右手のダメージ次第でしょうね。
でも奴らだって長期戦の用意なんてしているはずないから、やって一週間、たぶん二、三日の間がキモになると思うわ」
「へー、凄いんだねミカさん。
農夫がその年の作物を予想するみたいに、戦場の事が判るんだね」
ミカは、ガブ、と魚の干物にかぶりつき、
「こっちは何年もプルートゥと戦場に出ていたのよ。
あんなチンピラたち、目じゃないわ」
豪快に笑った。
「じゃあミカさん、この辺のカードの事、判る?」
チェコはミカに、紙袋のカードを見せた。
「また変なカードばっかり集めたものね」
「この大地のアースとか、面白いと思うんだ」
ミカはパンを齧り、魚で出汁を取ったスープを飲みながら考え、
「普通はトーナメントデッキ五十枚にアースを出すスペルを入れるのならば、それはチェコの捕食みたいに大量アースを手に入れる場合に限られるわ。
一アースだけ、手に入るなら、せめて色が判らないと使えないと思うわよ」
そう言われれば、そうかもしれない。
「ま、今はそれでも良い場合もあるかもしれないけどね」
「じゃあ、この花クラゲは?
強さが判らないんだ」
ミカはカードを見て、
「たぶん状況次第で強さが変動するんでしょうけど、それを明示していないところがキモなんでしょうね。
何が出るのか、やってみないと判らないビックリ箱、って言えば聞こえはいいけど、何によって、どう変化するか判らないと、怖くてデッキには入れられないわね。
まぁ、最低でも毒があるから、ブロック要員を兼ねたタップ要員、ってところかしら」
「じゃあ、この鳴子は?」
「これは、例えばタッカーのデッキとか、相手の動きが判らない時には、それなりに有効かもしれないけど、常に使うカードじゃないわね。
でも日常生活では、今も便利に使えるかも。
ちょっと、張ってみましょうか」
ミカは言うと、鳴子を発動させた。




