紙袋
「ああ。
何だっけ。
アイテムを召喚獣にする奴でしょ!」
「軍隊旗、青のカードよ」
「だけど確か、優勝したのは緑の増殖する奴じゃなかったっけ?」
「そうよ。
だけど、両方とも去年、ずっと流行していたデッキなの。
皆が使えば、弱点も判るし、対抗策も発見できるわ。
だから流行っているデッキは強いのよ」
ふーん、とチェコは生返事をした。
なんか、つまらないな…、と言う気もする。
が、確かに、勝つにはそれが一番なのかもしれない。
チェコのデッキを人が使っているのを見れば、やっぱ遅いな、とか客観的に見れるような気もするのだ。
カードショップを出て、だいぶ明るくなってきた路地を歩いて酒場に戻り、部屋に向かう。
「でもミカさんはオリジナルデッキだよね?」
フフン、とミカは自慢げに、
「これは師匠から受け継いだデッキなのよ。
師匠は、それは強かったんだから。
ベン・フラッフに勝ったこともあるのよ」
「え、ビックベン!」
ベン・フラッフ通称ビックベンは、ヴィギリス王国のナイトであり世界ランク四位のスペルランカーだった。
スペル無効化やその類似カードを多用した、相手に何もやらせずに勝つ、戦いのプロであり、昨年も三位決定戦に負けたとはいえ、トップランクのデュエリストだった。
「本当に、あのビックベンに勝ったの?」
ミカはギラリと笑って、
「全てのスペル無効化が不発だったのよ。
師匠がベンをキュプトピラゥズで殴り倒したところを見せたかったわ」
チェコはもっとバトルの話が聞きたがったが、部屋に帰ると、ミカはさっさと一番隅に布団を敷いて寝てしまった。
チェコは自分の布団の上に座って、買ったカードを広げる。
そして、紙袋のカードも調べてみた。
分離 一体の召喚獣を二体に分離する。
地走り 地中を走った炎が、的の目前で爆ぜ、相手を燃やす。
遅滞 全ての召喚獣の動きが遅くなる。
接合 二体の召喚獣を一体にする。
大地のアース 自分の足元から、アースを引き出す。
何色になるかは土地次第なので判らない。
癇癪玉 地面に十個の癇癪玉を撒く。
踏むと一ダメージ。
透明 一定時間、透明になる。
鳴子 設定した範囲に敵が侵入すると音が鳴る。
蛇を呼ぶ 近くにいる蛇を呼ぶ。
花くらげ 水の召喚獣。
毒カウンター。
見えない壁 五/十の見えない壁。
聖水 アイテム。
集団召喚 三体の召喚獣をいっぺんに召喚できる。
乖離 その召喚獣の能力を使えなくする。
大地のアースは二枚、地走りは三枚あった。
十四種類で十七枚だ。
鳴子は、デュエルでは使わなそうだし、蛇を呼ぶ、などはなんだか意味が判らなかった。
「まぁ、色々欲しい、って言うのは判るけど、大抵、使えるカードは決まっているものなのよ」
ミカは欠伸をし、毛布をかぶった。
集団召喚も判らないカードだ。
八アースかかるが、三体、召喚獣を出せるという。
でも、さすがにゴロタは出ないよな?
大地のアースは0アースで使えるらしいが、色が判らないのは使い勝手が悪かったのだろうか?
けっこう良いカードな気もするが…。
チェコは色々、カードを見ながら考えた。




