無駄金
「でも、そんなんじゃあ、トーナメントは白の圧勝になっちゃうよね?」
チェコの質問に、ミカは首を振る。
「白は確かに強いんだけど、言ってみれば天使しか強い奴がいないのよ。
しかもスペルカードが高いの。
やっぱり最強は青なのよ」
へへん、とミカは勝ち誇った。
チェコは青のカードを見る。
「バブルとかも実戦で使えたし、そーいうトリッキーなカード、他にもないかな?」
ミカは黄金の髪を掻き上げて、
「水流は、デュエルでは召喚獣一体を一ターン動けなくするカードだけど、リアルでは水が噴き出すの。
一瞬の隙を作ったり、もちろん飲むことも出来るわ。
緑の油溜まり、は油で滑らせて同じ効果を作るのよ」
どちらも、ぜひ欲しいカードだ。
「そうそう、あたしの封印は、カードを使う前に使えなくするスペルだけど、もっとありきたりなのが、ボックスに帰す、という戦略よ。
この消滅、とか、こっちの召喚獣はタップして場に出ている何かしらをボックスに帰すの」
「え、でも、それまた使えちゃうんじゃないの?」
「そうよ。
でも自分のカードなら、それが都合がいい場合もあるでしょ?
それに、今、まさに襲い掛かってくるドラゴンや天使を返してしまえば、他の召喚獣だけなら自分の方が強い、って場合や、出るのが判っていればスペル無効化で対処できる、って事もあるでしょ。
タッカーも消滅を一枚持っていれば、負けなかったかも、な訳よ」
そう言われれば、確かにそうだ。
ちょっとした事で、戦いのバランスは大きく変わる…。
「緑の、霧、も相手の攻撃を無効化するけど、黒の麻痺は、敵の攻撃だけダメージ0になるから、より強い、って言えるわね。
実戦でも攻撃ダメージが0になって、チェコも剣を振っていれば、それは通るのよ。強いでしょ」
おお…、とチェコは感動していた。
それならばチェコでも、左腕に対抗できる。
霊憑依、呪いを二枚、仕掛け矢と爪の罠二枚、底なし沼、水流、油溜まり、消滅、麻痺、そして紙袋のカード詰め合わせを買い、チェコは店を出た。
もっとゆっくりショップを堪能したかったが、ミカはもう寝る、と言うのだ。
「それに、あんな小さな店で、ありきたりなカードを買ってもたかが知れてるわよ。
大きなショップなら輸入のカードや最新のカードを売っているし、大会に出るなら、道は2つ。
誰も知らないカードを使うか、それとも、流行の最も強いデッキを参考にするかよ。
こんな所で無駄金を使う事は無いのよ」
「流行のデッキ?」
「そう。
毎年、新しいコンボや戦法が発明されて、強いデッキが現れるわ。
去年はアイテムデッキが強かったのよ」




