白
霊憑依と呪いを二枚、アイテムでは仕掛け矢と爪の罠二つ、あとは緑黒の底なし沼とチェコは考えた。
しかし、せっかく生まれて初めてカードショップに入ったのだから、端から端まで見てみたかった。
「あれ、この黄金虫って知らないな…」
黒緑の複合カードのようだ。
「あんた、そもそも複合カードを知らなかったでしょう。
とはいえ、あたしも初めて見るわ。
えーと三アースで、五/五飛行?
ちょっとしたドラゴン並みに強いわね」
「それに三アースって、安いよね?」
チェコもミカと顔を並べる。
「あ、判ったわチェコ。
これ、欠点のある奴よ。
三アースで五/五飛行だけど、自陣に召喚獣がいない時にしか出せないの。
あんたウサギデッキでしょ。
これは使えないんじゃないの?」
「そうだねー」
棚を見ていくと、紙袋にカード十七枚二十リン、と書いてある。
「え、どういう事?」
チェコは興奮するが、ミカは。
「あー、結構スペルカード業界も、浮き沈みは激しいものなのよ。
売れないカードは、ああして一山幾らで売られてしまうの。
ま、屑カードですけど、って奴ね」
ふーん、とチェコは紙袋を見た。
ほら、チェコ、天使がいるわよ」
ミカが呼んだのでチェコは走るようにミカの元に向かい、ふと立ち止まって一袋のカードを手に取った。
「わぁ、剣の天使、六/五飛行、赤無効化だって」
「天使は特にこういう力とは別なところが強いのよね。
しかも、色変えコンボっていうのがあるのよ」
「なに、色変えコンボって?」
「白のスペルに、好きな色に変えられるスペルがあるの。
つまり、それを使えば相手に合わせて、どんな色でも通用する天使になるわけよ」
「えー、それ、もうスペルって言うより、インチキなんじゃないの!」
チェコは、つい怒った。
が、ミカはウンウンと頷き、
「本当にインチキみたいなものよ。
だから無色のアイテムダメージに有用性があるのよ」
「うーん、そう考えると生贄の釜かぁ」
とチェコは、視線をアイテムの棚に飛ばす。
「白アースの人は少ないんだけど、あれって聖職者の修業をすると身につける事が出来るのよ。
修道院とかで、よくやっているわ。
メンドクサイんだけど、でも白は強いのよ、残念ながら。
召喚獣除去のスペルも破壊ではなく、殲滅って言って、再生も墓地から甦らすことも出来ないのよ。
どんな強敵も一枚のスペルでお終いなのよ」
ミカの言葉に、チェコは気が遠くなってきた。
「嘘ぅー、イカサマだよ…」
と唸った。




