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「赤よりも、攻撃がしたいならアイテムで戦うのはどう?」
ミカは、黒ずんだ木の床と天井の、古い、艶のある一枚板の木材に反射する、四隅に並べられた蝋燭の揺らぐ明かりに金髪を輝かせて部屋を横切った。
今は、身体に包帯を巻いていないので、ほっそりとした美貌が暗い部屋の中で、より良く映えていた。
最初から、綺麗な人だとは思ってたけど…。
チェコは、不意にミカの美しさに気が付いた。
包帯に隠されていないミカの肌は、常に守られている事もあってか、艶やかな果実のように滑らかに輝いている。
「ベーシックに仕掛け矢とか、爪の罠、生贄の釜、なんかもいいわよ」
金色の長い睫毛から覗く琥珀色の瞳がチェコに囁く。
仕掛け矢は、初めてヒヨウに会った時、ヒヨウも使った、よくあるアイテムだ。
一アースで、三本の矢を好きな時に撃つことが出来る。
一矢、一ダメージだ。
爪の罠は、二アースで、攻めてきた敵に五ダメージを与える。
ただし敵が攻めてこなければ使えないので、抑止力が強いアイテム、と言えた。
生贄の釜は、自分の召喚獣を生贄とし、その分の攻撃ダメージを相手に与える。
チェコの持っている反逆などとコンボをすれば、敵の召喚獣を自分のものにして釜に放り込む、という荒業も可能だった。
「あれだよね。
アイテムは、出すだけで一ターンかかるスピードの問題…」
特にリアルバトルでは、スピードが必要なのはチェコも痛感していた。
雷でも間に合わないドゥーガを相手にしては、アイテムは発動が遅すぎるのだ。
「ま、初撃には使えないわね。
でも出しさえすれば、発動自体は二つ頭と同じ速さなのよ」
「え、本当なの?」
それは最速スペルという事だ。
ミカは、
「やれやれ。
そんな事も知らなくて、良く戦ってきたわね。
ちゃんと勉強しないと、いつか足元を掬われるわよ。
召喚獣の能力、例えばリスの木の実を投げる、なんかも同じ速度だから、弱そうに見えても馬鹿にできないの。
一ダメージって、不意打ちだと結構痛いのよ」
そうだったのか…。
リスも、あの場面で、もっと使えば良かったんだな…。
と反省するチェコに、
「あら、こんな山の中のショップな割に、複合カードもあるのね」
とミカはチェコを引っ張って、また部屋を横切った。
化粧水だろうか、甘い香りがチェコの鼻腔をくすぐった。
「複合カード?」
ドキマキしながらチェコが問うと、
「そう、例えばチェコは最大で黒、青、緑が出せるから」
と棚を探し、
「ほら、小型のドラゴン、パンジードラゴンが出せたり、ハードルは高いけど、その分、お得なハイパワーなカードなのよ」
パンジードラゴンは五アースのドラゴンで、四/四飛行、緑のアースでパワーアップ、黒アースで毒を持ち、青アースで飛行を失う。
「飛行を失う、って意味があるの?」
「馬鹿ね。
飛行召喚獣を全て殺す、とか、飛行している召喚獣は攻撃できない、とか色々あるでしょう。
様々な状況を考えないと駄目よ」
そう言えば、確かに、飛行する全べての召喚獣を攻撃、等の場合には便利かもしれない。
ミカは複合カードを探し、
「ほら青黒で「毒霧」全ての召喚獣とスペルランカーに三ダメージ。
とか、緑黒の「底なし沼」。
攻撃してきた相手は動けなくなり、五ターン目に死、これなんてリアルバトルでも有効なのよ」




