必要なカード
「そうだった。
蛭谷は謎だよね。
一眠りしたら、ちょっと調べてみようか?」
チェコは言うが。
「止めなさい。
今、下手をうつとタッカーみたいに即死もあるのよ。
ここは向こうが動くのを待てばいいわ」
ミカは冷静に言った。
と、浴室の扉が開き、
「お、お前らも風呂だったか?」
とタフタが入ってきた。
びくん、とタッカーは慌てて、
「チェコ、僕はもう出るからね」
と手拭いで前を隠して上がってしまう。
はぁ、とタフタは溜息をつき、
「都会の奴らはああなんだよなぁ」
と嘆いた。
「え、みんなそうなの?」
「嘆かわしい話しだよ。
奴ら、男のくせに化粧なんかをして、スッピンは裸より恥ずかしい、みたいな感じなんだよ」
ザバ、と湯をかぶると、タフタはドゥンと湯に入り、パトスは端に流されて、泳いでチェコの膝に戻った。
「おー、そう言えばお前、カードが欲しい、って言ってたっけ?」
チェコは思わず立ち上がり、
「欲しいよ!
くれるの?」
「やー、俺は生活のカードしか持っていないが、この村にも店はあるぜ」
バチャン、と湯に沈むチェコ。
「俺、金は無いんだ…」
と項垂れるが、キャサリーンの声が響いた。
「チェコ君、前金で二百リンあげるから、使えそうなカードがあったら買いなさい。
あなたの力は必要なのよ!」
「本当!」
チェコは飛び出るように湯を出て、服を着た。
「…チェコ、汗、拭け…」
パトスが叱るが、チェコは。
「すぐ乾くよ!」
「、、チェコ、女は風呂が長いのよ、、。
外で涼みなさい、、」
と、ちさも言った。
「おー、涼む涼む!」
小屋を出ると、辺りは早朝の光りが満ちていた。
酒場の裏庭のような場所で、奥は物置小屋があり、薪が大量に積み上げられていた。
その手前に座れるような台が作られ、ささやかな鉢植え植物が幾つか並んでいる。
台に座ると、さっそくカードを取り出した。
「リアルファイト用のスペルが、この際一番必要なのかな…」
と、チェコは自分でも気づかないうちに呟いていた。




