脱出
チェコは唸った。
ヒヨウを救出するためには、なんとか右手と戦った方が良いが、チェコは左腕との戦いでカードを使い過ぎていた。
「ヘッヘー。
てめえらスペルランカーは、こーゆー速攻の攻撃に弱いのは判っているんだよ。
全員吹き飛ばして、お宝をいただくぜ!」
チェコたちと右手は互いに睨み合った。
「馬鹿は相変わらずね…」
ミカは囁き、
「流砂!」
右手は、あ、という叫びと共に砂に飲み込まれ、砂の中に流されてどこかに消えていった。
「ミカさん、ありがとう!」
チェコは喜んで叫ぶが、ミカは鼻で笑って、
「あいつは、ちょっと、ここが足りないのよ」
と頭を叩いた。
「だけど、ピンキーはそんなに甘くないわよ。
ヒヨウと爺さんをどうするのか、ちゃんと考えといた方がいいわ」
チェコは顎を擦って、
「ウェンウェイさんも捕まったの?」
「判らないけど、パトスでも見つからないのなら、そう思っといた方が良いわよ」
「パトス。
ウェンウェイさんの匂いは、全然ないの?」
パトスはクンクンと周囲の匂いを嗅いでいるが、
「…今のところ匂いはない…。
ただ風向きが変われば、また違うかもしれない…」
と教えた。
「うーん、どうすればヒヨウを助けられるのかな?」
チェコは腕を組むが、ミカは、
「とりあえず今は、連中もヒヨウたちを殺しはしないわ」
「あ、人質って事だね」
ちさに聞いていたので、チェコは答えた。
「そうよ。
奴らは人殺しなんて屁とも思っていないけど、お宝は欲しいのよ。
交渉の余地はあるわ。
だから、あたしたちはグズグズせずに赤魔湖に降りてしまった方が良いわ。
どのみち、奴らは追ってくるんだから」
「えっと、確か蟻がいるとか?」
チェコは思い出した。
「夜の明けない前なら蟻は出てこないから、蟻塚を突っ切って湖に行けるのさ」
タフタが言う。
「僕も殺人蟻よりは湖の方が良いと思うな」
タッカーも言った。
「えと、という事はヒヨウの救出は?」
「どの道、ピンキーの出方を見ないと判らないのよ。
ここは、奴らが予め罠を仕掛けた、灰かぶり猫のフィールドよ。
そこから脱出してから、ゆっくり考えましょ」
ミカの言葉に、皆、頷いた。
チェコたちは砂漠を滑り下っていった。




