動物森を越えて
三人は、ぴたり、と背に貼り付くように歩き続ける。
森には、ありとあらゆる動物の姿が見えていた。
猿は道を歩きながら、背中から植物を生やして静止していたし、巨大な大角鹿が立っている、と思うと、足元は根が生え伝っている疑似植物シカモドキだったりする。
木にとまった猛禽は、羽ばたく寸前で胸から緑色の蔦を吹きだして息絶え、苦しそうに背を曲げた人間の口腔から大輪のヤマユリが花開いていた。
パトスの鼻のおかげで、罠にはまることも無く、三人は森を抜けていった。
「ほら、あそこの塩杉から上に登るんだよ」
森の中、ひときわ巨大な樹木、塩杉が見えてきた。
「えー、今度は木登をするの!
さっき崖まで登ったのに…」
実際は、チェコとパトスが引き上げただけだったが、キャサリーンはぼやいた。
「大丈夫、大丈夫!
階段を上るだけだよ」
「階段?」
キャサリーンは首を傾げたが、近づくと一目瞭然、馬車よりも太い塩杉の幹に、横杭が刺さり、幹の周りを巡る螺旋階段になっていた。
「ちょっと怖いわ…」
「平気、平気。
手摺も作ってあるんだから」
なるほど、木の幹には、ロープで手摺まで作られてあった。
「ここは猟師さんたちが手入れを欠かさないから、安全だよ」
塩杉の幹をぐるぐると登り、巨大な枝で一休みをしながら、周りの木々を追い越して青く抜ける空の上に登っていくと、塩杉から吊り橋が渡されていて、向かいは、動物森とは空気が違う、普通の森林に辿り着いていた。




